東京大学|大学院教育学研究科・教育学部 東京大学|大学院教育学研究科・教育学部

研究科長・学部長あいさつ

研究科長・学部長 勝野研究科長
研究科長・学部長
勝野 正章

現代社会において,教育に対する期待や要求は確実に高まっています。近代的な教育制度の成立以来,教育は常に社会的課題への対応を求められてきました。問題が深刻であればあるほど,その根本的な解決は教育に託されてきたと言えます。現代を生きる私たちも,平和,人権,健康,環境,持続的発展,新しいテクノロジーなど,実に多くの深刻な課題に直面しています。そのいずれもが教育と深く関わっているという事実は,課題の後に「教育」の文字を付してみれば直ちに了解されることでしょう。

教育学が置かれている状況もまたしかりです。教育学は,日常的に直面する課題から,グローバルな視点に立って解決を求められる課題まで,それらの「処方箋」を求められるようになっています。そのため,教育学は様々な学問分野(ディシプリン)との連携・協働を強めるようになっています。教育学はもともと,ヒトの成長と学習に関する探究を中心的な関心としながら,ヒトが働きかけ,働きかけられる自然と社会へと視野を広げる総合的な学問として発展してきました。また,教育学は,育む/教えるという実践と深く結びついた学問分野でもあります。実践を介した再帰的な性格を持つことが,知的探究としての教育学の特徴です。現代の教育学は,こうした異なる学問分野をつなぐ役割,学術知と社会的課題の解決をつなぐ役割をますます求められているのです。また,すべての学問分野に言えることですが,社会的課題の構成を問い直したり,新しい価値を創出することも教育学の重要な任務です。

このような現代の状況のなかで,本学部・研究科は「グローカルな共生社会の実現に向けた,格差と分断に挑む『架橋する教育学』研究教育拠点」の構築を目指しています。まず教育面では,「インクルーシブな知性」を備えた市民とプロフェッショナルの育成を目指し,従来からの教育学教育の高度化とともに,バリアフリー教育や心理職養成プログラムの拡充を進めています。後者は,D&I(Diversity and Inclusion)の推進を掲げる東京大学の全学教育の充実にも大きく貢献しています。

本学部・研究科における研究は,各専門分野を代表する研究者によって推進されています。さらに,本研究科附属の先端研究拠点である学校教育高度化・効果検証センター(CASEER),バリアフリー教育開発研究センター,発達保育実践政策学センター(CEDEP),海洋教育センターの4センターでは,革新的な分野横断的研究が行われ,その研究成果の社会実装が進んでいます。また,本学部附属中等教育学校では,長年にわたって協働的・探究的な学びの実践研究が行われてきました。2017 年度からは,CASEER と連携して,その縦断的な効果検証プロジェクトも進行中です。

こうした教育と研究は,東京大学の他学部・研究科等は言うまでもなく,国内外の他大学・研究機関,保育園・子ども園・幼稚園,学校,自治体,NPO・市民社会との密接な連携・協働により進められています。また,多様性と包摂性(D&I)が尊重される共生社会の実現を目指す私たちは,すべての学生と教職員が安心して学び,研究し,働けるコミュニティであることを目指しています。その一歩として,2021 年度には教育学部セーファースペース(KYOSS)を開設しました。

教育学部・研究科に興味を持っていただいた皆さんと共に意義ある挑戦をさらに進めていけることを心から楽しみにしています。

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