東京大学|大学院教育学研究科・教育学部 東京大学|大学院教育学研究科・教育学部

研究科長・学部長あいさつ

研究科長・学部長 小玉重夫先生
研究科長・学部長
小玉 重夫

 東京大学教育学部は,第二次世界大戦後の1949 年に創設され,一昨年(2019 年)に,創立70 周年記念式典を挙行いたしました。140 年余の歴史を有する東京大学のなかでは,比較的新しい学部であり,戦後民主主義の建設を担う新制大学のシンボル的な存在としてつくられました。そして,日本における教育の民主化に貢献をし,戦後民主主義教育の拠点としての輝かしい足跡を残してきました。

 しかし戦後75 年を過ぎた現在,日本と世界は大きく変わろうとしています。2020 年に新型コロナウイルスの感染は世界中に拡大し,私たちを取り巻く日常の姿を大きく変えました。教育においては,対面で行うコミュニケーションの割合が縮小し,オンラインとリモートでのコミュニケーションの割合が拡大しています。この変化は,人と人とのつながりにおいて少なくない不自由と困難をもたらしましたが,他方で,それまでなしえなかった時間と空間を越えた関係づくりの可能性を開いてもいます。

 本学部・研究科では,この困難と可能性の双方をしっかりと見据えて,東京大学と共に,新しい時代の教育を創造する課題に取りくんできたいと考えています。オンラインの教育環境の充実と,感染予防のための部屋の空調設備の改善等に万全を期し,学生教職員が安心して大学生活を送れる環境の構築に努めて参ります。

 このような時代だからこそ,本学部・研究科は,戦後民主主義教育の拠点としてのこれまでの蓄積のうえに,新しい日常に見合った新しい民主主義とそこでの教育の姿を提示するという使命を中心となって果たす段階に入ろうとしています。たとえば,本学部附属中等教育学校が取り組んできた卒業研究に代表される探究的な学びの実践は,戦後体制のなかではやや異端的な場所に位置づいていましたが,センター試験廃止や高大接続改革のなかで,むしろ時代を牽引する役割を果たそうとしています。同校は2016 年度から2019 年度まで文部科学省の研究開発学校に指定されディープ・アクティブラーニングを通じた「探究的市民」の育成に取り組んできました。本学部・研究科もそうした同校の取り組みを全面的に支援し,2017 年度から学校教育高度化センターを改組した「学校教育高度化・効果検証センター」を創設して,附属中等教育学校での探究的市民育成の効果を長期的な視野で検証するプロジェクトをはじめています。

 また,2017 年度には,教育実習を中心として自由の森学園中学校・高等学校と,インクルーシブ教育を中心として大阪市立大空小学校と,コミュニティに根ざした保育を中心としてまちの保育園・まちのこども園と,それぞれ連携協定を結びました。また,渋谷区との連携事業の一環として,2020 年度には,連携事業拠点である区立渋谷保育園「子育て研究室」を開設し,保育と教育の研究を始めています。これらの取り組みを通じて,本学部・研究科は,東京大学における知の創造と市民社会とを架橋して行くプラットフォームとしての位置を一層強化していきたいと考えています。

 東京大学教育学部は総合教育科学科の1 学科で3 専修5 コース制をとっています。大学院教育学研究科には,総合教育科学専攻と学校教育高度化専攻の2 つの専攻があります。総合教育科学専攻は3 専修7 コース制を,学校教育高度化専攻には専修はなく3 コース制をとっています。学部,大学院を通じて,日本と世界を代表する教育研究者が結集をし,多様な方法,多様なアプローチから教育の現象と実践にアプローチをしています。学部・大学院に入られた皆さんは,上述したような時代の変化を鋭敏に感じ取りつつ,研究の最先端に触れることができると思います。

 多くの皆さんが私たちの教育学部と教育学研究科で共に学び研究を深めていくことを期待しています。

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