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学校教育高度化・効果検証センター

学校教育高度化・効果検証センター

センター設立の経緯と目的

学校教育高度化・効果検証センター(Center for Advanced School Education and Evidence-Based Research: CASEER)は,平成29 年度にこれまでの学校教育高度化センター(平成18 年度創設)を改組して設置されました。学校教育高度化センターは教職専門性の高度化,学校開発政策の高度化を推進することを目的として研究活動,講演会等のイベントを行ってきました。前身である学校臨床総合教育研究センター(平成9 年度創設)の「実践性」「総合性」「連携性」の原則にもとづく学校教育の現実的な問題解消を目指す研究の伝統を継承しつつ,学校教育高度化専攻との協調関係を基盤としながら,全国の大学,教員養成機関,教育委員会,学校等との連携をはかっています。平成29 年度には,教育効果のエビデンスの蓄積を目的とした効果検証部門が整備され,令和元年度には,グローバル部門を教育高度化部門と改称し,活動の発展を目指しています。

効果検証部門

効果検証部門は,「高等教育ユニット」と「中等教育ユニット」の2 つの下位ユニットに分かれ,教育の効果の実証的検討を通じてより効果的な教育を模索しています。

「高等教育ユニット」は,社会に出ていく前の大学生生の成長において,高等教育が持ちうる機能を実証
的に検証し,その結果をもとに高等教育の実践に対する政策提言を行っていくことを目的に設立されました。具体的には,東京大学・大学総合教育研究センターと連携し,東大の学生が在学中に受ける教育や卒業後の教育がもたらす効果について互いの関連を分析することで,東京大学の教育がもつ効果を明らかにすべく,学生を対象とした各種調査を分析・検証しています。
 「中等教育ユニット」は,中学生・高校生の生徒たちが経験する主体的・探究的な学びが,大学や社会へとどのようにつながっていくのかを,実証的に検討することを目的に設立されました。具体的には,東京大学教育学部附属中等教育学校(以下,附属学校)と連携し,附属学校の在校生・卒業生を対象としたパネル調査を実施しています。在校生のパネル調査は,附属学校の生徒たちが在学中に毎年度行われるもので(平成28 年度より継続的に実施しています),附属学校の特徴である総合的な学習への取り組みが,生徒たちの価値観や探究的な態度,市民性の発達に対しどのような影響を持ちうるのかを検討することを目指しています。卒業生のパネル調査は,附属学校の生徒たちが卒業後に行われるもので,附属学校での学びが大学での学びを介してどのように就労をはじめとする社会的なアウトカムにつながっていくのかを検討しています。

効果検証部門 プロジェクト例

  • 大学教育の分野別内容・方法とその職業的アウトカムに関する実証研究( 科研基盤( A )18H03657,研究代表:本田由紀,令和1~令和4年度)
  • 知識基盤社会を支える人材育成に向けた大学院教育に関する国際比較研究(科研基盤(B)20H01693, 研究代表:福留東土, 令和 2~6 年度)

教育高度化部門

教育高度化部門では,学校教育のさらなる発展を促進するための研究及び実践活動,特に教育の国際化に関連する研究の推進を行っています。また,若手研究者の国際発信力の向上を目指した活動も行っています。
 令和元年度より,「グローバル部門」から「教育高度化部門」に部門名を改称し,部門の下に「グローバルシティズンシップ・ユニット」と「グローバル教育ユニット」を置き,国内外の教育機関やユネスコ・国連大学などの国際機関,研究者と連携しながら,研究活動をさらに発展させることを目指教育に関するリフレクションと業績評価に資するティーチング・ステートメントの研究しています。

若手研究者育成プロジェクト

教育高度化部門の事業の一つとして,教育学研究科博士課程の大学院生を対象に年1回研究プロジェクトを募集し,多様な観点からの研究の実施を支援しています。これまでの募集テーマは以下のとおりです。

平成24・25 年度 「社会に生きる学力形成をめざしたカリキュラム・イノベーション」
平成26・27 年度 「グローバル時代の学校教育」
平成28・29 年度 「多様性をはぐくむ教育」
平成30 年度   「教育とエビデンス」
令和2・3 年度  「教育の常識を問い直す」
令和4・5 年度  「教育における多様性と包摂性」

研究成果は,教育学研究科と学術交流協定を結んでいるストックホルム大学教育学部との共催シンポジウムにて発表することもでき,これが若手研究者の海外での発表・交流の場となっています。

  • マレーシアの幼児教育に関する公開セミナー(2022 年5 月)

グローバルシティズンシップ・ユニット

グローバルシティズンシップ・ユニットでは,主に「持続可能な開発のための教育(Education forSustainable Development:ESD)」に関連する研究や教育の国際化に関する研究を行っています。

 

グローバル教育ユニット

グローバル教育ユニットでは,主に日本型教育の海外展開と教育の国際モデルの多元化に関する研究や日米の小学校の交流を通じた国際理解教育を支援・推進するプロジェクトを行っています。
これまでにインドネシア,エジプトなどからの特別活動に関する視察団・研修団の受け入れ,インドネシア,マレーシアなどで日本型教育モデルと全人的教育活動に関する学校の実践支援,大学での講演を行ってきました。

教育高度化部門 プロジェクト例

  • アジアにおける高等教育の連結性とイノベーションに関する統合的地域研究(科研基盤(A)20H00094,研究代表:北村友人,令和2 ~ 6 年度)
  • 知識基盤社会を支える人材育成に向けた大学院教育に関する国際比較研究( 科研基盤(B)20H01693,研究代表:福留東土,令和2 ~ 6 年度)
  • 移民・難民の子どもを包摂する文化的に適切な教育と社会統合に関する国際比較研究(国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B)20KK0044,研究代表:額賀美紗子, 令和 2〜7 年度)

スタッフ紹介

本田 由紀(ほんだ ゆき)センター長(教授)

本田 由紀(ほんだ ゆき)センター長(教授)

本センターは,設立以来,社会における教育課題に対応する形で機能や事業を拡大・発展させてきました。現在は,教育高度化部門と効果検証部門の 2 部門を擁しており,前者では教育を巡る国際交流などグローバル化を主眼とし,後者では中等教育・高等教育に関する独自の調査研究を進めています。毎年,特定のテーマのもとに院生が自由度の高い研究を展開する「院生プロジェクト」,附属中等教育学校における探究学習の実践とパネル調査の成果を公表する公開シンポジウムの開催,ストックホルム大学との学生の研究交流など,充実した活動を進めてきました。これからも,国内外に山積する教育を巡る諸問題や変革の動きに対して柔軟に対応しながら,目指すべき教育の実現に向けて,議論と検証を蓄積し,広く公開してゆきます。今後ともご協力のほど,何卒よろしくお願いいたします。

栗田 佳代子(くりた かよこ)助教(高等教育)

栗田 佳代子(くりた かよこ)
教授(高等教育)

高等教育における教員の資質向上に寄与するための質の高いFD プログラムの開発と普及支援を研究しています。本学においては大学院生および教職員を対象とした「東京大学フューチャーファカルティプログラム」を担当し,その実践を行いつつ大学教員準備プログラムの発展可能性や人材育成を模索しています。また,大学教員自身の資質向上の一要素として「リフレクション」に注目しており,ティーチング・ポートフォリオおよびアカデミック・ポートフォリオの作成プロセスにおけるリフレクションの効果や,その普及支援に関する研究に取り組んでいます。

岩淵 和祥(いわぶち かずあき)助教(比較教育学)

岩渕 和祥(いわぶち かずあき)
助教(比較教育学)

教育の国際化が異なるレベルにおいて,どのようなメカニズムで起きるのか,特に制度論的な視点から研究しています。これまでは日本の国際バカロレア導入をめぐる政策過程を明らかにして参りました。現在は,そうした政策的意図と教育現場での教師の実践との多様な関係に焦点を当てて研究を行っております。センターでは若手研究者の育成も支援しております。私自身,学位取得から日も浅くまだ駆け出し研究者の身ですが,院生や若手研究者の皆様と近い目線で一緒に研究活動を盛り立てていけるよう尽力して参ります。センターを起点として,日本の教育がグローバル化していけるよう,またそれと同時に,そのグローバル化がもつ意味合いを内省できるよう一助となれましたら幸甚に存じます。

教育研究創発機構
Organization for Creating Educational Research

2004年度から,教育学研究科内に,学校臨床総合教育研究センターをひとつの中核センターとして,教育研究創発機構(以下,機構)が設立されました。ますます複雑化し,多様化する「教育の問題」を解明するためには,既存の学問分野にとらわれない教育研究が必要です。このような時代の要請に応えるために誕生したのが本機構です。したがって,機構は,従来の教育研究の枠組みにこだわることなく,新たな教育研究を誘発し創造することをめざした新しいタイプの組織といえます。

機構は,「学校教育高度化・効果検証センター(旧学校臨床総合教育研究センター)」に加え,2009年に発足した「バリアフリー教育開発研究センター」,2015年に発足した「発達保育実践政策学センター」および2019 年に発足した「海洋教育センター」の4センターを中心に,さまざまな分野の研究をつなぎ,さらなる発展を促すためのインキュベーション(新規研究支援)ないしネットワーク構築のための活動を行っています。とくに大学院学生をはじめ,若手研究者に,「コースの壁」「既存の領域の壁」を越えた研究交流の場を提供することを機構の課題と考えています。次世代が担っていくべき新たな視点からの教育研究を創発することも,機構の役目です。

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