星加 良司(ほしか りょうじ) 教授

社会学・障害学
私は2009 年10 月より,同年4 月に教育学研究科に新設された「バリアフリー教育開発研究センター」に着任しました。専門は社会学で,社会現象としての「障害」を分析するための理論モデルに関わる研究,アファーマティヴ・アクションの社会的効果や規範的妥当性に関する研究,障害研究における「当事者性」の意味と可能性に関する研究等を行っています。
障害を社会現象として把握すると,実は障害者の経験する不利益や困難の多くが,特定の状態を規範(norm)からの逸脱と見なし「異常(abnormal)」なものとして規定する社会的な名付けの過程を通じて,また特定の人々のライフチャンスを制約し不利益を増幅させる社会構造を通じて生じるものであることが見えてきます。
こうした様々な社会的要因を研究の俎上に乗せることによって,障害者を含む様々な社会的マイノリティにとって生きやすい社会を構想するための豊富な選択肢について検討することが可能になります。
従来の「バリアフリー」の研究と実践は,やや偏った前提の上に成り立っているという側面があり,多くは,あらゆる人々が既存の社会的な価値や規範にアクセスできるようにするための手段を見出そうとするもので,バリアフリーの研究/実践がかえってバリアを増大させるといった意図せざる結果も生まれてきています。そうした価値や規範のあり方自体を問い直そうとしていくことが重要です。この領域の「常識」をあえて疑いつつ,多角的な視点からの「バリアフリー」の教育研究を進めていければと考えています。