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インタビュー |
3.保護者のかた
―この学校の全体的な方針というのはご存知ですか。
入る時に学校説明会に何度かお邪魔してますし、理解しているつもりです。受験勉強だけに通用する知力というよりは、社会に出てから人として社会に役立っていく真の知力みたいなものを養いたいという思いを先生方が持っていて下さるというのにすごく共感しましたし、総合学習が、片手間総合学習というよりは、本格的だという印象を持っているので。うちの子なんかは学科の勉強のほうではどうにもこうなかなか自信がもてないところもあるんですけど、総合学習においてはやっぱり心を耕してるなあという印象を、彼を見てると思うんですね。そこに本当の学力が必要だとは思っているんですけども、そこら辺のバランスがとれてくると、何十年後か先に、大人になったときに、社会の中で何か役に立つことができるんじゃないかなと期待しております。
―卒業研究というものも本格的にあると生徒さんからお聞きしてびっくりしたんですが。
調べ学習というのは、1年生のころから、いろんな身近なところから始まって、経験を積んでいってるんですけど、卒業に向けて、表面的な調べ学習ではなく、それがどういう結論に結びついていくかっていうところを追究していく・・・なかなか難しいなって。途中でね、壁に突き当たったときに、そこをどうこうやっていくのかなあって親としては心配でもあり、楽しみでもあり。
―そういった学校方針の中で、生徒指導というのがあると思うのですが、校則としてはどのようなものがあるかご存知ですか。
制服の問題ですとか。高校においては私服でも良いようなんですが、色に関してですとか。そういうのは一応親は把握しているんですが、子供たちは、意外と言われないせいかそこが自由というように勘違いしているところがあるのかなって。
―色というのは。
洋服の色です。コートの色ですとか・・・。靴下の色ですとか。
―そうなんですか。色に関してはあまり生徒さんからはお聞きしなかったのですが、保護者の方には配られている。
そうですね親のほうはものすごく意識してるんですけど、生徒の方は自由なのかな。
―髪を染めてはいけないというのとか、ピアスをあけてはいけないというのはあると思うんですけど。
あと携帯ですとか音楽機器ですとか。
―学校全体としてどのくらい生徒さんは守っているんでしょう。学校の雰囲気でもいいんですけど。
うーん、あまり守られてない(笑)。あまり守られてないわりには、乱れてこないから、不思議っていうか。私たちの代ってものすごく校則が厳しかった時代なんですよね。だから反発する気持ちっていうのはすごくわかったし、ただ・・・そうなんですね、校則ってどうだろう、とか考えますよね。私立学校とか本当に厳しくって、ぱっと見はきちんとしている印象があるんですけども、かといって中が乱れていないかっていうと、いろいろあるみたいなので、不思議だなって思います。
―外見的なことや持ち物の事は守ってはいるわけではないけれども、荒れているわけではない。
そうなんです。きちっと大人とも話ができますし、息子なんかも、ぱっと見はそういうふうに見えてもあの先輩はとても一生懸命な人だとか・・・子供の中では見た目では判断していないみたいなんですが、大人はどうしても外側を見がちなので、子供にはものすごく言ってしまうんです。髪の毛とか、着ていくコートの色とか、ボタンを閉めろとか。
―先生方からはどのような指導が。
先生も、いわゆる罰則をするとか、首根っこつかんでぐっとかはないみたいです。お声がけはしてくださるようなんですけど、やっぱり子供の自主性なり・・・まあ、一度言われてきちっと直さない、なら何度も言わない、というのはあると思うんですけど。
―ある意味とても厳しいですね。
そうなんです、はい。ただ遅刻に関してとてもお声がけいただいて、遅刻はしないようにねってことは。
―遅刻の場合には保護者の方も。
そうなんですやっぱり家庭の協力が必要かなって思うんですよね。
―保護者の方と先生方との連携はとれている。
細かいことでもご相談すると、とても真摯に受け止めていただいて、話を聞いていただいています。
―学校側の方針に対して厳しすぎるとか緩すぎると感じている事はありますか。
4年間ここに在籍しているので、馴染んできてしまったのかな。厳しさと緩さというか自由にしていくバランスはとても絶妙なものを感じる。初めはとてもヒヤヒヤ、こんなに自由にしていただいて、子供たちは自分でコントロールがきくんだろうかと思うんですけど、わかってくるんですね、何度か失敗して、これはここまでだ、こんなこといつまでもやってると恥ずかしいとか。
―お子さんが自分で気づく。
うん、親も付き合い方をこの学校にいると反省する部分は・・・やっぱりこう待ってあげられないのがあったんですけど、とりあえず待ってみるというのはありますかね。時間は特に、うちの子は特に時間がかかるんで。
―服装や遅刻を直すのにですか。
うちは遅刻はないんですけど。直してほしいと思う部分が直ってくるのにとっても時間がかかる。でもどこのお子さんもそういうとこはあるんでしょうね。15・16歳でパーフェクトに学校生活を送れるかっていったら無理ですもんね。だからといって私はうるさくしないわけにはいけないので、朝はとにかくうるさく言ってますけど。もうこの時間に玄関を出て!って(笑)。
―なるほど。服装は全校集会でも、意外と制服のお子さんが多いなって思いました。
制服の方が良いと思います。私服だとお金もかかりますしね。
―今の校則でこれはあったほうが良い、なくても良い、付け足したい、というのはありますか。
携帯電話とかは、賛否両論あると思うんですけど・・・自分の子供は棚に上げてしまいますけど、携帯とかゲームとか音楽とかは、学校にいらないかなって。それがあるために約束の時間を守れないとか、家でいった事が守れないとか。ちょっとだめだったとか行けないとかこの時間は間に合わないとか、一本入れれば良いと思っているところがあるので。責任を持たない。
―時間に対して。
この時間に来てくれないと今日は困るから家に帰ってきなさいとか、それをちょっとメール一本でっていうのは・・・。お互い心配だから持っていてほしいっていうご家庭もたぶんあるとは思うんですけど。女の子と男の子はまた違うでしょうしね。
―連絡がつきやすいという意味では持っていてほしいというのはあるのかもしれないですね。
そうなんですよね。やっぱり、携帯があってネットがあって、そういう社会に当然のように生まれてきた世代なので、私と全く違う。そこをどう見ていくかっていうのは、親子関係非常にこう、すごい考えることですね。時間なり約束なり人に何か意見をするときに、きちっとこう顔見て言えてるのかなって。
―携帯電話だとメールのやりとりがコミュニケーションの一部になってしまいますからね。
待ち合わせもギリギリまで決まらなかったり。
そうですね。だからでもそれはきっと違うんですね。社会が違ってきたから、親がそれをどう理解して、だけどコミュニケーションってここが大事だよっていうホントの本筋のところを、ここの学校では学んでほしいかなと。コミュニケーション力はものすごくつけてほしいと思って入れた部分もある。でもそこに後ろから押し迫るように携帯とネットの波がくるので、それにどう対応して・・・いけてるんですかね、若い子達は。振り回されず選ぶ能力が。
―どうでしょう。私たちの頃はまだ途中の世代だったので。中学校の頃は携帯禁止で高校は良いという狭間にいたので、禁止と言えばそれは当たり前だという時代もあったので・・・今のお子さんたちは小学生のころから携帯電話があったんですよね。
そういう時代にいる子供たちとは、何かが違うから、理解してあげなきゃいけない部分もあるかなと最近思っていますね。この校則はいらないっていうのは子供たちに聞くときっとものすごく出てくるんでしょうね。
―生徒会のお子さんはそんなにこれはいらないというのもなくて。
子供たちは縛られているっていう実感はないみたいなんです。
―そうみたいですね。
校門に立ってすごく厳しく指導されるってこともないからかもしれないんですけど。
―そうですね。公共のマナーをもっと守ったほうが良いという話があったり・・・もともと自分たちが髪を染めたりしないのでということをおっしゃってたんですが。だからあってもなくてももともとしないからって。外見に対する規則についてはどうお考えですか。
個人的な意見としては、しっかりあってほしいと思います。私のような年代の者から言わせれば、自由を謳歌できる時期はいつかくると。だから学校にいるときは、高校生らしさや中学生らしさを楽しんでほしいっていう思いがすごくあって・・・でも外見ってそんなに気になるんですか。私は全然興味が無かったので。外見を何かしようとか、校則に違反しようという考えが起きなかったので。だからそれに反発したいっていうエネルギーは・・・そこがでも自己表現なんですかね。
―私自身は大学に入るまで外見について特に気にしてはいなかったんですけど、同じ学年にはやはり中学生の頃からスカート丈を短くしたいという子はいましたね。
それはその子の思いなんですよね。あふれる思いを、校則という中で上手に操ってほしいと思うんですよね。この決められた中で、自分の自己表現をするのが、この中高でいかに楽しいかを・・・まあそれは出てみないとわからないんですけど、出るとホントにこう自由になるので、恐ろしいほど自由なんで(笑)。だからこの決められた中で、校則を守る中で、自分を自己表現する楽しみを探してほしいかな。
―外見的なことではみ出すのではなくて、創造的な課題とかスポーツとか・・・。
そういう感じですよね。でも見てると、ものすごくはみ出てるけど、すっごく楽しそうにしてる子もいるので。髪染めてすごく派手なお洋服を着て、ここで生活している子も、とっても楽しそうにしてるので・・・表現なのねって(笑)。
―そういうお子さんもいらっしゃるんですか。
いますね。びっくりする子もいますけど、でもそれは先生もたぶんそういう子の良さも受け止めつつ、注意しつつ、やってるんですかね。
―休日や男女交際禁止などプライベートに関する規定が校則として定められている学校も中にはありますが、そういうことについては。
ここの学校も長い休みに入るときには、誰とどこに行って何時に帰ってくるのかきちっと家に報告しなさいっていうものがあるのですが。記述としてそれを載せておくことは大事かなって。うちも、別にどこに行っちゃいけないとか誰と会っちゃいけないということはないんですけど、誰と会ってどこに行くのか、何時ごろに帰宅予定なのかというのは会話として必ずあるので、いつの間にか家に子どもがいないということはないですね。
―校則としては、なくてもいい。
うーん、よくね、小学校の頃から長い休みの過ごし方、っていうのがありますけど、それはここも出るので。
―それはあったほうがいいですか。
そうですね。ここの学校の生徒だっていうことに誇りをもって、恥ずかしくないことをしてほしいっていう意識は持ってほしいですかね。意識させる校則、だからあんまり堅いことをつらつら並べちゃって全くこう耳にも入らない校則よりは、彼らの自意識をくすぐるような。せっかく言葉を大事にしてくれている学校なので、それをフルに使って。
―例えば受験に差しさわりがあるからということで男女交際禁止という学校もあるのですが、そこまでは・・・。
必要ないと思います。恋愛って誰かを好きになるのは、頭の上で止めても、見えない部分で育っていきますよね。落ちた後に自分が一番後悔するんでしょうね、きっと(笑)。
―そうなんですよね、きっと(笑)。学校にいる時間もどんどん増えていくと思いますが、お子さんのしつけを考えたときに、学校がどこまで受け持って、家庭がどこまで受け持つべきなのか。
しつけは家庭だと思います。
―小中学校で朝ごはんを食べてこないから、学校で出すというような話も世間ではありますが。
問題外ですね。自分が親になるじゃないですか。私も親になって、親になったことを本当によく考えた1年でした。彼が高校に入って、親になった、なるってことがどういうことなのかっていうのは、私なんか親としてお会いするから親としてきっと見ていただくんでしょうけど、なんかね、すごく考えます。親ほど難しい仕事は何もないと思います。なんかあの、しつけっていうその、言葉に表したり、なにかこう、きちっと何かをするっていうんじゃなくって、家庭の中で、彼が見る風景、自分が東京に出てきて、家庭を持つまで何が力になったかっていうと、自分が昔持ってた自分が育った家庭のなんでもない風景なんですよね。ああ親がアイロンかけていたとか、家事をしながら私の話をすごくいっぱい聞いてくれていた風景とか、だからなんでもないことが大人になったときにものすごい力になるんですよね、自分が生きていく上で。だから当たり前のことを当たり前にしてあげる家庭であるべきだという風に思います。だから彼はうるさいと思っているかもしれないけれど、追い出すように、玄関を出て、玄関先までぽっと送っていく、「しっかりいってきなさい!」っていう毎日とか、ですかね。だからしつけって・・・ご飯の食べ方、部屋の掃除、そういう細かいことは、言いますけども・・・学校ではないと思います。校門に入ったら、学校の先生によろしくお願いしますっていう思いでいつもこう送り出すんですけども。
―お子さんに変化があった部分というのは。
中学校の頃は、自由で子供たちに任せてくれる部分が多いので、こんなに自由で大丈夫かなっていうこともあったし、結果がでないことも多かったんですが、でも成績は別として、いろんな意味で力がついてるんだと思います。自信を持ってない部分もいっぱいあるんですけど、まだでこぼこなんですけど、でも力がついてきた部分っていうのは、うまく言えないんですけど家庭で一緒にいて、あ、そういうことも学校の中でできるように、言えるようになったんだなって。中学3年生のときにものすごく焦ってしまった時期があって・・・高校受験を経験した子ってものすごく勉強するじゃないですか。でもその時間を持たなかった分ものすごく体験したこともあったので。
―生徒指導はしつけというものにどこまで有効でしょう。
ものすごく厳しくしてくださいっていっても、そうならないと思うんですよね、高校生の子どもを持ってみて実感するのは。どんなに言っても、変えないものは絶対に変えないです。だから彼らの自尊心というのか理念に問いかける会話が一番彼らが変わってくれる。行動だったり、先生たちの何気ない言葉だったり、その方がよっぽどはみ出さない。はみ出すのがいかにバカらしいかっていうとこに行き着くエッセンスになるんですかね。
1.生徒会のみなさん
2.生徒指導代表の先生
3.保護者の方
4.インタビューを通して感じたこと

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