
教育学部 教育心理学コース
自身の経験から、困難を抱える人の視点に立ち理解したいと考え、個人の視点を重んじる心理学に惹かれました。

教育学部 教育心理学コース 学士4年
蓮見 大翔さん
Hiroto Hasumi
幼少期から母子家庭で育った経験を背景に、悩みを抱える人への支援に関心を持つ。
入学後は社会学にも惹かれたが、当事者の視点から理解するため心理学を選び進学。臨床・教授学習・発達を学び、研究による実証と実践による応用を往還する姿勢を培った。実験演習で検査・面接・観察・質問紙作成など研究法を修得。
学習メンターのアルバイトでは新規校リーダーとして現場改善にも挑戦。2026年度から大学院臨床心理学コースへ進学し、公認心理師・臨床心理士取得を目指し福祉分野での活躍を構想している。
教育学部(教育心理学コース)を選んだ理由
ー 教育学部・教育心理学コースを選んだきっかけや、他の学部と迷った経験について教えてください。
私が教育心理学コースに進学した理由は、臨床心理学やそれに基づく支援について学びたいと感じたからです。私自身、幼少期から母子家庭で過ごしてきました。反抗期には母親と衝突することも多く、互いに負担となりました。金銭的にも苦しい状況でした。
東大に入学してから、自分や多くの人々のそうした経験は、個人の問題にとどまらず大きな社会構造の中で生じるのではないかと感じ、社会学に関心を抱くようになりました。しかし、駒場時代に受けた社会学の授業では、その視点が自分にとってややマクロすぎるように感じました。むしろ私は、広い意味で悩んでいる人が何をどのように経験しているのか、その人自身の視点から理解したいと思うようになりました。その適切な手段は自分にとって、社会学ではなく心理学でした。
東大には文学部の心理学科や社会心理学科など心理学を学べる学科がいくつかありますが、自分の興味に近い臨床心理学関連の授業や公認心理師科目をいちばん履修しやすい教育心理学コースが適していると判断し、進学を決めました。
実際には教育心理学コースでは臨床心理学だけでなく教授・学習心理学や発達心理学についても学ぶことができます。これらはいずれも人への広い意味での支援と密接に関わっており、幅広い心理学領域から人間理解を深められる点が教育心理学コースの魅力であると考えています。

教育学部で身についた力・スキル
ー 教育学部で学ぶ中で、どのような力やスキルが身についたと感じていますか。
教育心理学コースで、学問的態度として「研究による実証」と「実践による応用」の往還が重要であるという視点を獲得できたと考えています。たとえば臨床心理学では、心の問題を抱えた人への支援だけでなく、より有効な支援を確立し社会へ説明責任を果たすための研究も常に求められます。よって心理支援の実践と研究法の双方を学ぶことになります。教授・学習心理学においても、文献から学ぶだけでなく、学校現場など教授・学習が行われている現場から研究して実証し、その成果を現場へ還元することが求められます。研究と実践双方の能力を磨くことができるのが教育心理学コースの特徴です。
また、学習でのつまずきや心の問題について学ぶことは、自分自身や他者、子どもがより安心・安全に暮らすためにも必要なことであり、学んだことを直接的に生活に取り入れやすいのも本コースの特徴ではないかと思います。
特にやりがいを感じた授業・学び
ー 教育学部での学びの中で、特にやりがいを感じた場面を教えてください。
2Aから3Aまである教育心理学実験演習Ⅰ〜Ⅲというほぼ必修の授業でやりがいを感じました。これはテーマが教育心理学や臨床心理学にまたがり、主な研究手法である検査法、面接法、観察法などについて網羅的に学ぶ授業です。レポートも多く課されます。
たとえば2Aでは、ふだんなかなか経験することのできない知能検査や発達検査、投影法などの心理検査を実施し、その結果を分析する授業がありました。また、特別支援学校を見学させていただく回もありました。
3Sでは、グループで質問紙を一から作成し、既存の尺度との関係を分析して一つの研究を書き上げる授業がありました。他にも、インタビュー研究を行う調査面接法の授業、セラピスト役としての自らの面接態度を内省する臨床面接法の授業、保育園児のビデオを観察して分析する観察法の授業などがありました。
3Aでは、より卒業論文を意識した授業になります。教育心理学コースのそれぞれの先生が提示するテーマをいくつか選択しレポートを書き上げました。
実験演習の授業は比較的大変でしたが、仲間とわちゃわちゃ助け合いながら乗り越えることには楽しさも感じました。また、しっかりと研究法についても学ぶことができるため、卒業論文をやり抜く上での基礎体力になったと思います。
加えて、公認心理師科目も25科目取得しなければならないためやりがいがあります。たとえば4Aでは心理実習の授業があり、高校や病院、作業所など心理師が活躍する現場へ赴き見学・交流します。これまで座学で学んできたことと現場がつながって世界が広がり、今後のさらなる学びのモチベーションにつながったと思います。
教員・学生同士の距離感と学習環境
ー 教員や学生同士の距離感、学習環境について教えてください。
教員との距離は近い方だと思います。卒業論文の執筆が始まる4月に必ず指導教員がつき、卒業論文のテーマ決めからデータ収集・分析、論文執筆方法まで丁寧にご指導いただけます。心理学においては研究法が大まかに量的研究と質的研究に分かれますが、どちらも専門の先生がいらっしゃいます。大学院生も実験演習の授業やレポート添削、卒業論文でのTAを担当してくださるため、研究を進めるにあたってはかなり良い環境だと個人的には感じます。
3年生まで必修の実験演習の授業があるため、同級生と仲良くなりやすい環境だと思います。自分たちの代は3Sで五月祭に出展しました。公認心理師科目は4AWまであるため、公認心理師・臨床心理士資格取得を目指す同級生どうし助け合いやすいと思います。3Sの教育心理学実験演習Ⅱのレポートが大変だったため、教育学部棟のラウンジでみんなで助け合いながら執筆したことが特に思い出に残っています。
大学生活・課外活動と学びの相乗効果
ー 大学生活や課外活動で、特に力を入れて取り組んだことはありますか。
3年生後半から現在にかけて大学院入試や卒業論文があったため、意識的に課外活動は行っていない状態です。しかし、特に3年生のときは学習メンターのアルバイトで新規校のリーダーとして頑張っていました。学習メンターとは簡単に言えば放課後の中学校や高校で自習室運営やイベントを行うアルバイトです。自分は教授・学習心理学系の授業で、学習でのつまずきをどのように支援すべきか学ぶ機会がありました。学習メンターのアルバイトでも、大学で学んだ内容を活かして生徒たちがより有効に学ぶことができるような手伝いをしました。通常そうした支援では自分の経験を伝えることに終始しがちですが、大学で学んだ科学的根拠に基づく指導を行えたことは良い点でした。
また、リーダーとして、現場で自分の能力を磨くだけでなくチーム全体としてどのように質の高いプログラムを提供するのか、どのようにして現場での課題を拾い上げ解決策を現場へ還元するのかといったことも考える必要がありました。正直あまりうまくいかなかった部分もありますが学びは多かったです。

ー 影響をうけた本や映画などはありますか。
自分が大いに影響を受けた著書は、F. スコット・フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』です。簡単にいえば、1920年代の輝かしいアメリカで下流階級出身のギャツビーという主人公がある夢を追いかけて成り上がっていくものの最終的に崩れ去る物語です。当時1年生の自分にとってはあまりに衝撃的で、現実を突きつけるものでした。しかし虜になり2年生の春には原文をすべて写経しました。特に最後の一節は自分の座右の銘になっています。
だからこそ我々は、前へ前へと進み続けるのだ。流れに立ち向かうボートのように、絶え間なく過去へと押し戻されながらも。
F. スコット・フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』

教育学部で学ぶことの魅力
ー 教育学部で学ぶことの最大の魅力は何だと思いますか。
最大の魅力は「人と関わり合うことについて学ぶことができる」ということです。
授業でグループになって研究をすること。ふだんの日常生活で学科内の友人と一緒に作業したり、遊んだり、ご飯を食べたりすること。授業で実際に小学生と触れ合って学習のつまずきを支援すること。心理面接の手法や態度を学ぶこと。実際に障害を持つ方と話したり交流したりすること。
他の学科であればなかなか関わることができなかったであろう方たちとも関わることができました。実際に生身で関わり合うことによって、一般的な知識以上のものを感じられるときがあります。その人は自分の学習対象であるよりも前に、個別の人生を歩んできた一人の人間だからです。人と相対する自分自身のあり方も考えさせられます。このように、ふだんの日常生活から授業まで、人と関わり合うこととは何か、人と関わり合う自分自身とは何かについて学ぶことができることが最大の魅力であると強く感じています。
将来の進路と展望
ー 今後の進路や、将来どのような分野で活躍したいと考えていますか。
2026年度からは本学大学院教育学研究科の臨床心理学コースへと進学する予定です。研究を進めながら公認心理師・臨床心理士の資格を取得し、福祉分野で研究能力や心理師資格を活かして働きたいと考えています。入学時の自分は社会学を学びたいという思いがありました。そして現在、個人支援だけでなくよりマクロな環境へのアプローチもするべきであるという思いが再び強まってきています。この東大生活で考えが1周しました。しかし、まず個人支援の知識・技能を身につけることが必須であるという考えは揺るがず、そこは入学時と異なりこの学科で深まった部分です。
教育学部を目指す学生へのメッセージ
ー 教育学部に向いている学生や、進学を迷っている方へのメッセージをお願いします。
心理学を通して自分自身や他者と向き合いたいと考えている方には特におすすめすることができますが、幅広い内容の授業が開講されているコースなのでどのような方でも何らかの学びは得られると思います。
ただし、将来的に公認心理師・臨床心理士の資格を取得したいという明確な意志がある方は、本コースに進学することを強くお勧めします。東大の中で公認心理師科目を一番履修しやすいのはおそらく本コースだからです。
まだ専門的に学び始めていない段階で、どの学科でどのような学問を学ぶことができるかはわからない方が多いと思います。前期教養課程のうちに、該当する学問に関する授業を受講するとイメージが膨らむと思います。同じ学問でも授業テーマはさまざまなので、1つの授業ではなく複数の授業を取った方が進学後のミスマッチを防ぐことができると思います。
学部選択に迷う学生へのメッセージ
ー 学部選択に迷っている学生へ、伝えたいことはありますか。
自分が入学したときは教育学部に行くことなど予想もしていませんでした。そもそも教育心理学や臨床心理学という学問があることすらほとんど知りませんでした。もし前期教養課程という珍しい制度が東大になければ、自分は1年生のときから社会学部や文学部に進学し、今の進路を知ることはなかったと思います。
東大の進学振り分けの良いところは、存分に迷うことができることだと考えています。「迷う」ということばは一見するとネガティブに思えますし、迷いすぎるとたしかにつらくなってしまうでしょう。しかし、過酷な受験勉強を駆け抜けて東大に入学し、その途端、自分の過去はいったい何だったのか、自分とはいったい何者なのか、自分はこれからどのような人生を歩めばいいのか、わからなくなって悩み始めることはとても自然なことだと思います。むしろそうした迷いこそが、アイデンティティを達成し、納得できる道を自分自身で選択するために必要なのだと思います。
もちろん迷った上で選んだ進路が一時的に失敗だったと感じることはあるかもしれません。あるいは基本平均点が足りなくて第一志望の学科に行けないこともあるかもしれません。しかし、そこで人生が終わるわけではなく新たな学科で新たな経験が積み上がっていきますし、その過程で、選んだ進路が案外悪くなかったと思えたり、むしろよりよい進路になったと思えたりするときがくるかもしれません。未来を恐れすぎず、ぜひ迷う時間を大切にしていただきたいと感じます。

教育学研究科・教育学部案内パンフレット(PDF)
本学の学びの特徴、カリキュラム、研究内容、学生生活、そして卒業後の進路まで、進学検討に欠かせない情報を一冊にまとめています。
教育学を本格的に深めたい方に、全体像がつかめる内容です。
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