教えて考えさせる授業 実践紹介
トップページ 解 説 資 料 実践紹介 研修・講演等 関連サイト |
「『教えて考えさせる授業』が、どのようなものか実際に見せてほしい」と言われると、私は
「それなら、いっしょにTT授業をやってみませんか」ともちかけます。授業をつくるプロセスを
相手の先生に知っていただくことと、その学校の先生方に授業の様子を見ていただくことが
ねらいです。
「習得」をめざした授業であることが前提ですが、「普段着の授業」として提案しているのが
「教えて考えさせる授業」ですから、こちらから教科、学年、単元はとくに限定しません。とく
に、これまでの授業実践では、概念理解、意味理解が難しかったと言われているところや、
定着が悪かったと言われているところのほうがやりがいがあります。(実際には、算数・数学
で依頼されることが圧倒的に多いです。)
私は、個別学習相談や夏休み学習ゼミナールなどはやってきたものの、日常的に学校での
授業をやっている学校教員ではありません。ですから、個々の指導技術よりも、「教えて考え
させる授業」の授業展開がどのようなものか、という観点から見ていただきたいと思います。
また、授業によっては、教える工夫や理解深化課題の工夫を凝らしているものもありますの
で、参考にしていただければ幸いです。
■授業ビデオの貸与について
「教えて考えさせる授業」の研修や講習を受けた方で、希望のあった場合に
は授業ビデオのファイルを貸与しています。
ただし、公的教育機関(学校や教育委員会)の責任者を通じて申し込むこと、
コピーやネットへのアップはしないことなどの一定の制約があります。お問い合
わせは、下記あてに。
NPO法人 学習支援研究機構
代表者 市川伸一 (ichikawa@p.u-tokyo.ac.jp)
上記のように、私がTTで授業をしたものが多いですが、その後、学校の現職
の先生方から提供してもらったビデオも含まれています。
■指導案について
下記は、やや古いもので、かつてこのページに収めていたものです。その後、
指導案は書籍として出版されるようになったものが多くあります。「解説」の
ページをご覧ください。
小6算数:異分母分数のたし算・ひき算 (2010年10月 八戸市立長者小学校) ワード文書
小学校の中では非常に難しく定着も悪いと言われている単元ですが、「教える工夫」として、教科書によくある線分
図や面積図ではなく、「分数玉」という学習材を導入しました。「1/n の分数玉は、n 個集めると1に交換できる」とい
うもので、お金のアナロジーを使っています。分数玉という操作しやすい具体モデルによって、「単位分数がいくつ
あるか」という量分数の概念の定着をはかり、通分にもっていきます。
分数玉は、すでに岡山県矢掛町立三谷小学校の授業で導入し、そのときは予習プリント(ファイルはこちら)として
教示しただけですが、長者小学校では単元のはじめから分数玉を使ってもらいました。この予習プリントは、本時
の前日に復習用に使われました。当日は、たし算、ひき算のしかたを教え、類題で理解確認をしたあと、理解深化
では、仮分数、帯分数のはいった計算の自力解決、協同解決を行っていきます。
中1数学:線対称と点対称 (2009年12月 岡山市立香和中学校) ワード文書
線対称、点対称については、定義、性質、相互関係などがあいまいなままの生徒が多いようです。本授業では、
前時に習った線対称と、未習の点対称を対比しながら同時に扱い、双方について理解を促すことをねらいました。
教える工夫としては、線対称と点対称に別名をつけることで、その定義を明確にします。すなわち、折ると重なる
「オルトカサナール図形」、180度回すと重なる「マワストカサナール図形」です。
それぞれの図形についての用語(対称の軸、対称の中心、対応する点など)と対称図形のもつ性質を示し、理解
確認課題では、アルファベット26文字について、「線対称」、「点対称」、「線対称かつ点対称」、「どちらでもない」
という4通りに分類させます。理解深化では、4象限に分割したマス目に、1象限分だけ図形を与え、生徒は、「線
対称」、「点対称」、「線対称かつ点対称」の図形を作る課題に取り組みます。
中3数学:比と平行線 (2009年12月 江田島市立三高中学校) ワード文書
本時の「比と平行線」は、生徒が教科書を読み込み、教師が教科書に沿った指導を行っても、「いったいここで
やっていることは何なのか」という位置づけができない生徒が少なくないようです。また、「教科書の証明を読み、
教師が解説しても、自分で証明ができない生徒が多い」という問題があります。証明問題というのは、中学校の
数学における最大の関門ともいえます。
本授業は、「教えて考えさせる授業」のデモ授業として、@「比と平行線」で扱う命題(定理)を整理して理解する
こと、 A証明するときの思考過程として、結論から逆にたどる「後ろ向き思考」を理解し、口頭で思考過程と証
明過程を説明できること、を目標とします。教師がモデルとして、「後ろ向き思考」をやってみせ、理解確認、理
解深化を通じて体験的に習得させることをねらいます。 (参加者からの授業評価はこちら)
小5国語:はじめてのプレゼン (2009年10月 貝塚市立西小学校) ワード文書
プレゼンという発表形式は、視覚的な素材を用いながら、口頭での説明を加えていくところにあります。他教科
でのプレゼンの機会は学年を追って増えていくでしょうし、社会に出てからも非常に重要な技能です。国語科の
中で、見本を示したり、技能のポイントを明確に示しやすい点では、「教えて考えさせる授業」がやりやすい領域
といえるでしょう。
本時では、「プレゼン」ということを意識して行うはじめての発表として、大人用の新聞記事から難しい言葉を調
べて、クラス内で伝えるという比較的簡単なものとしました。視覚素材も画用紙1枚と限定します。教師から、演
示と基本的なポイントの教示を行い、「理解確認」として、児童が見本のパネルを使って模倣してみます。さらに
、「理解深化」として、自分たちで選んだ言葉を、パネルに簡潔に表現して口頭の練習をしていきます。
(本授業は、「教えて考えさせる授業」のDVDに収録され、販売されています。)
高2物理:落体運動の素朴概念 (2009年5月 埼玉県立越谷北高等学校) ワード文書
真空中では石も羽も同じ速度で落下することを観察し、運動方程式を理論的に理解しても、「重いほうが速く落
ちる」という感覚はなかなか払拭することができないという生徒が少なくないようです。この素朴概念を克服する
には、自らの信念のどこまでは正しく、どこからが誤りであるかを理解する必要があると考えました。つまり、学
習者が自分自身の素朴概念の由来を理解した上で克服するということです。
そこで、空気抵抗のない場合の落下の法則を、空気抵抗がある場合の現象(漸近的に、質量その他の条件に
応じた最終速度に近づく)と対比して理解させるという方法をとりました。理数科の高校2年生というレベルの高い
クラスですが、メンタルモデル(集団フリーフォール)による説明、思考実験による理解深化課題(空気抵抗のあ
る場合のv−tグラフの推測)などを入れて、確実な定着と高度な思考・理解をめざします。
市川研究室のメニューページに戻ります