システム脳科学に興味のある方へ

脳神経科学の研究を行っている所は、たとえば本学内だけでも沢山ありますが、その中で本コースの特徴は、システム脳科学・計算論的神経科学の研究を行っている教員が集まっているということです。具体的には、学習、運動制御、脳の発達と認知、睡眠、意思決定などに関する研究が盛んに行われています。ヒト被験者を対象とした心理・行動実験と脳機能イメージング実験(NIRS・fMRI・脳波)、および数理モデリングが、現在本コースで用いられている主な手法ですが、動物実験の専門家との共同研究も複数進められており、希望と状況に応じてそうしたプロジェクトに携わることも可能です。また、コース全体としては、脳を含めた身体に関わる諸現象の理解と、その応用を研究対象としており、たとえば報酬系の異常と精神疾患の関わりや、脳・身体の相互作用と情動の関係などについて、精神医学の専門的知識と経験を有する教員からの指導を受けたりもしながら、広い視野を持って研究を進めることができます。さらに、教育学研究科の中にあって、教育や臨床心理など、実世界との接点を明確に意識しながら脳研究を行えるのも本コースならではの特徴です。

本コースでは、修士課程からはもちろん、博士課程から分野を変えての入学も歓迎します。システムレベルの研究に密かに興味はあるけれど、何だか難しい統計や数学が出来ないと厳しそうだからなあという方、そんな心配は皆無です、とまでは言いませんが、実のところ、ごく基礎的なことを理解すれば十分に研究を行っていくことができます。もちろん使える手法が増えれば増えるほど研究の自由度が増えるという恩恵が得られますが、好きこそものの上手なれ、という諺どおり、研究対象への強い興味に導かれて、自ずとシステム解析の方法論を次々と身につけていってしまうという虫の良いことが、さらには、それが他でも役に立つという一石二鳥的なことも、現に起こりうるように思います。そしてまた、たとえば分子・細胞生物学や心理学など、他の分野を知っているからこその強みというのも、必ずや有るのではないかと思います。実は、この文章を書いている教員(森田)自身、修士までは分子・細胞生物学を修め、博士から計算論的神経科学・システム脳科学の世界に入りました。やっていけるのかという不安も正直なところ大きく、でもこれが最後のチャンスかもしれないという思いで入ったのですが、色々な方々のお世話になりつつ、楽しく研究を行ってくることができています。私のみならず、本コースには、様々なバックグラウンドを持つ教員が集まっています。脳と心をシステムとして理解する術を探求したいという方、あるいはさらにそれを応用に結び付けていきたいという方、ぜひ私達と一緒に研究してみませんか?