「給特法」

給特法、正式には「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」といいます。

教員の仕事とは、自身の自発性や創造性が必要とされるものであるため、教員に対し「公立の義務教育諸学校等の教育職員の職務と勤務態様の特殊性に基づき、その給与その他の勤務条件について特例を定める」のが、この「給特法」なのです。
この法律の第三条によって教員は給料月額の百分の四、つまり給料月額の4%の教職調整額が支払われることが定められています。もちろん、「条例で定めるところにより」とされているので、各都道府県が支給率の増減をすることができるのですが、本俸月額のほぼ4%が教職調整額として支給されています。
第三条の2に記されているように、時間外手当は支給されません。これはつまり、教職調整額をもらっている以上、時間外勤務について別途手当てがつくということはないということです。
また、第四条では教職調整額を給料とすることが謳われています。これにより、教職調整額はさまざまな手当てを算出する際の基礎となります。
したがって、教員給与月額は一般行政職給与月額を2.76%上回るものとなっているのです。

教職調整額についてのポイント

  1. 時間外勤務手当を支給しない。
  2. 時間外手当の代わりに、教職調整額として給料月額の4%を基準として、各都道府県が定める割合の金額を支給する。
  3. 教職調整額は給料相当とされ、期末・勤勉手当などの算定の基礎とされる。
  4. 時間外勤務を命じることのできるのは「限定4項目」に限られている。

この、給料月額4%というのはどこから来たのでしょうか?実をいうとこの数字は、昭和41年度の文部省実態調査で明らかになった月8時間の超過勤務に相当する金額として算出されたものです。
つまり、「月8時間の超過勤務に見合う額=給料月額4%」というわけなのです。しかし、最初に見たように現在の中学校教員は月40時間の超過勤務をこなしています。これについての手当てはどうなるのでしょうか?

そもそも、はじめから教員に教職調整額を支給して、それ以上の時間外勤務手当を支給しないということは何を意味するのでしょうか。
それは、教員の仕事というのは残業が避けられない。月8時間ほどの残業が生じてしまうのは致し方ない。なのではじめからそれに相当する分の金額を給料に含めておこう。そのかわり、「限定4項目」を除き時間外勤務を命じてはいけない、ということなのです。
この「限定4項目」とは給特法が例外的に超勤を認めている4つの項目で、(1)生徒の実習に関する業務 (2)学校行事に関する業務 (3)教職員会議に関する業務 (4)非常災害等やむを得ない場合に必要な業務 の4項目が含まれます。さらにこれに関わる業務であっても超勤を命じることができるのは、「臨時または緊急にやむを得ない場合」に限られています。

このあたりで現在の月平均40時間という超過勤務がいかに異常なものかが分かっていただけたのではないでしょうか。
もともとほとんどの場合禁じられている超過勤務だが、教員という職務の特質上やむおえず生じてしまっていた月平均8時間の残業に対し教職調整額が支払われていました。しかし、現在はその8時間を大きく上回る月40時間の残業が行われており、それに対し教職調整額は増える兆しもありません。それどころか、最近の動向は教員給与月額が一般行政職給与月額を2.76%上回っていることから、その2.76%分だけ縮減しようとする動きすら出てきているのです。

このような教員の時間外勤務の実態は給特法の仕組みに支えられています。つまり、給料月額4%の教職調整額を支給することで、すべての超勤をごまかし、無制限の長時間勤務を強いる結果になったということです。教員が残業をしていても、管理職である校長がそれを命じたのでなければ、善意で仕事をしているということになります。つまり「サービス残業」のようなものです。その結果、教員の時間外勤務は超過勤務と認められず、ごまかされてしまうのです。


このページでは、教員の時間外勤務の実態がいかに異常なものであったか、さらにその実態を支える仕組みが法律に隠れていたということが分かっていただけたでしょう。
次に今までの内容と、今後の課題をまとめてみようと思います。

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