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連携プロジェクト

教育における「力」の概念に関する学際的研究

研究代表者:今井 康雄

学内分担者:小玉重夫/川本隆史/金森修/多賀厳太郎/田中智志/針生悦子

研究概要

  書店には「・・力」という書名があふれている。内閣府の「人間力戦略研究会報告書」(2003年)、経済産業省の「「社会人基礎力」育成のススメ」(2007年)に見られるように、「力」という言葉は広義の教育に関わる政策提言にも浸透している。こうした「力」の氾濫は、単なる流行現象であるにとどまらず、教育を支える社会的条件の構造変化と結びついているように思われる。ポスト・フォーディズム的な労働環境では、特定のスキルを持つことよりも、臨機応変に状況に対応したり人間関係を調整したりできるような人格特性が評価される。1980年代以後の日本の教育政策は、特定の知識を持つことよりも知識を情報として活用する情報活用能力を教育目標に掲げてきた。特定の領域や対象を持たない形で人間の中に想定された「力」が、教育の焦点として浮上してきている。本研究は、「力」を教育の焦点に浮上させている重層的文脈を学際的に解明しようとするものである。

(科学研究費:基盤B)

研究会・学会発表等

第1回研究会

2008年5月31日 於:東京大学

今井康雄(東京大学)
 「現代日本の教育論における「力」の位置」

小玉重夫(東京大学)
 「有能であることと無能であること:学力論の組みかえに向けて」

田中智志(山梨学院大学)
「成長における自由と不安——フーコーの力とハイデガーの存在」

第2回研究会

2008年7月26日 於:東京大学

川本隆史(東京大学)
「「共生力」って何なの?―《力=ちから》概念を脱・集計化するために」

宮寺晃夫(筑波学院大学)
「開発論から分配論へ―能力の教育政策の立脚点をもとめて」

教育思想史学会コロキウム:教育における「力」の概念

2008年9月12日於:奈良女子大学)

今井康雄(東京大学)
 「教育における「力」概念の浮上
      -その短期的・中期的・長期的な文脈」

田中智志 (山梨学院大学)
「完全性と力
      -ヨーロッパ近代教育概念史の試み」

田村謙典 (東京大学大学院生)
「読み書き能力から「趣味」「内面」の育成へ
      -1910年前後の国語教育における「力」概念の登場」

北原崇志 (東京大学大学院生)
「ミシェル・フーコーにおける力の批判的分割
      -能力概念の由来と尊重関係の消失について」

広田照幸 (日本大学)
 コメント

第3回研究会

2008年9月27日 於:東京大学

針生悦子(東京大学)
 「子どもの言語獲得」

小原一馬(宇都宮大学)
 「老人力・質問力・鈍感力−−90年代後半以降の「○○力」造語の分析」

第4回研究会

2008年12月20日  於:東京大学

多賀厳太郎(東京大学)
 「力学—ちからの科学と人間発達」

本田由紀(東京大学)
 「教育(学)は労働市場との接続問題を回避しうるか」

第5回研究会

2009年1月31日  於:東京大学

広田照幸(日本大学)
 「メリトクラシーを疑う」

木村拓也(長崎大学)
 「「総合的かつ多面的な評価」の科学的根拠を問い直す」

国際シンポジウム 家庭教育・就学前教育の日独比較——課題と展望

2009年2月28日、於:東京大学教育学部)

ウーヴェ・ウーレンドルフ(ドルトムント大学・東京大学客員教授)
 「導入」

キム=パトリック・ザブラ (ドルトムント大学)
「青少年福祉の担い手としての父親」

ウーヴェ・ウーレンドルフ
「ドイツにおける就学前教育—伝統と改革努力」

青木美智子(東京大学大学院生)
「日本における就学前教育改革と保護養育観の変化—「認定子ども園」の課題」

ニコール・ローゼンバウアー(ドルトムント大学・東京大学客員研究員)
「ドイツにおける児童虐待とその防止」

小玉亮子(お茶の水女子大学)
「日本社会における暴力・家族・子ども」

ちから研合宿研究会

2009年3月5日—6日、於:KKR鎌倉わかみや

堤孝晃(東京大学大学院生)
「教育・社会と能力をめぐる二項図式」

田村謙輔(東京大学大学院生)
「読み書きが『能力』として語られるとき:芦田惠之助の教育思想の生成その受容」

竹内章郎(岐阜大学)
「『能力の共同性』論への諸論点—発端と形成途中の経過—」

サブグループ「人文・社会科学系分野における若手研究者育成と女性研究者支援」研究会

2009年3月27日

第6回研究会

2009年6月6日

白岩等(筑波大学附属小学校)「子どものわかりと子ども力」

市川伸一(東京大学)「岡山での学力・人間力育成推進事業とその周辺」

第7回研究会

2009年7月11日

斉藤直子(京都大学)
「Why language matters: Cavell's ordinary language philosophy and an alternative route to citizenship 言語から市民性へ——スタンリー・カベルと日常言語学派の哲学の可能性」

Richard Shusterman(Florida Atlantic University)
「Somaesthetics and Performance身体感性論と行為」

通訳 樋口聡 (広島大学)

Barbara Drinck教授講演会

2009年10月2日

バルバラ・ドリンク(ライプツィヒ大学)
「 東ドイツの教育目標としての社会主義的人格全体主義的国家は「新しい」人間の教育によってその権力を確保できるかDie sozialistische Persönlickeit als Erziehungsziel der DDR. Kann ein totalitärer Staat seine Macht durch die Erziehung “neuer” Menschen ausbauen?」

Manfred Heinemann教授講演会(2009年10月19日、於:広島大学東京リエゾンオフィス、お茶の水女子大学・中央大学との共催、教育史学会後援) マンフレート・ハイネンマン「ドイツにおける教育研究・歴史研究の現状」

第8回研究会

2009年11月7日

広田照幸
『ヒューマニティーズ 教育学』をめぐって

評者: 小玉重夫(東京大学)・ 中野浩(東京大学大学院生)

田中智志
『教育思想のフーコー 教育を支える関係性』 をめぐって

評者:金森修(東京大学)・関根宏朗(東京大学大学院生)

国際会議「グローバル化の時代における教育と言語・再考」

2009年12月10日、於:東京大学教育学部

「『大人の教育としての哲学』研究会」(生存科学研究所)と共催)

Paul Standish(ロンドン大学教育研究所)
「‘Nothing is hidden’: Wittgenstein, transparency, and the limits of language
『何も隠されてはいない』:ウィトゲンシュタイン、透明性、言語の限界」

今井康雄(東京大学大学院教育学研究科)
「Why does language matter to education?: Comparing Nietzchean and Witgensteinean Answers
言語はなぜ教育の問題になるのか:ニーチェとウィトゲンシュタインの回答」

斉藤直子(京都大学大学院教育学研究科)
「American transcendentalism and ordinary language philosophy: Stanley Cavell and philosophy as the education of grownups
アメリカ超越主義と日常言語の哲学:スタンリー・カベルと大人の教育としての哲学」

第9回研究会

2010年2月13日

安藤寿康(慶應義塾大学)
 「<ちから>の遺伝的実体性と有用性−進化教育学的試考」

河野哲也(立教大学)
 「〈拡張した心〉概念の教育への応用」

 

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