実際の現役教師はどのような勤務実態なのか、またその実態をどのように感じているのか。インタビューに答えていただきました。
質問者:和嶋渓 東京大学文学部3年
回答者:D先生 男性 50代 長野県の公立中学校国語教師 2年生担任 テニス部顧問 5人家族
― 1日平均の残業時間を教えてください。また、業務内容を内訳を教えてください。
D先生:一番大きいのは部活動です。朝50分、放課後1時間半で合計約2時間半くらいですね。部活動は土日にもあるので、平均すると 3時間以上になると思う。会議があると部活は出席しない。よって会議のみではなし。 事務作業では通知表などの時は2時間くらい。平均すると10分ですかね。学校行事では文化祭前/旅行行事・職場体験などの前は土曜日にやるくらいで平均すると5分もないか。授業準備は20分くらい。合計で毎日4時間位になります。
― 1日平均の持ち帰り業務を教えてください。また、業務内容の内訳を教えてください。
D先生:行事の計画案など平均すると30分くらい。
−残業、持ち帰り業務に関して、どういった時期に増えたり、減ったりしますか?
D先生:年度当初(4月) 学期末(7月、12月) 年度末(3月)は忙しいです。3学年担任になると、入試の関係で11月、1月も入ります。
― 月にどのくらい休日に残業をしますか?する場合、学校で行いますか?自宅で行いますか?また、業務内容の内訳を教えてください。
D先生:部活指導は残業になる?
― 含めてください
D先生:そうすると、だいたい土日何もない日の方が少ない。月に2日そんな日があるかないか。残業が土、日の場合は学校でやります。
― 公立義務教育学校の教員は、夏休み期間を含め、平均すると月34時間、1日2時間の超過勤務があり、それに持ち帰り時間を含めると月50時間を優に超える超過勤務をしていることが、2006年度に行われた文部科学省委託研究の「教員勤務実態調査」で明らかになっていますが、こうした、教員の超過勤務の現状について、先生はどのようにお考えですか?
D先生:教師は人を育てるということに使命感を持って働いている人が ほとんどだと思います。
部活指導にしろ、学級の指導にしろ、「仕事が趣味」になっています。だから「つらい」とか「しかたない」と感じたらやっていけません。
部活などは 「勝つ」という目標に生徒と共に励みますから 土日を返上してもやってしまうものです。確かに休みがあるとうれしくてのんびりできるのですが、部活指導自体にあまり苦には思いませんでした。
給与だけはもっとあげてもらいたいと思います。なぜなら、超過勤務をしても一定の「教職調整額」のみで民間が不況だと人事院勧告で すごく減らされているのでやはり老後とかが心配です。
−そうした現状に対して、他の先生など教育の現場はどのように感じているように思いますか?
D先生:超過勤務については、仕方ないと思っていると思います。中学の先生は特に部活の主顧問の先生は 特に大変です。
でもそれを生き甲斐にしている先生も多いので、いいのではないでしょうか。
― 欧州諸国と比べて、日本での超過勤務はかなり多いというデータもあります。何故、このような超過勤務の実態が生まれているのか、先生はどのように考えますか?
D先生:生活にゆとりが出てきて 教育に関心があるのはよいが、ありすぎて また、マスコミも一方的に公権力批判(政治家・警察/教員)をすると盛り上がるという 風潮が日本にはあるとおもいます。
また、日本は何でも「学校任せ」が当たり前になっているのもいけません。欧米は生徒指導は家庭の責任ですし、困ったことは カウンセラーに相談しますから。こまかい生徒指導やしつけ的なものに教師が時間や精神力を多く使っているというのもあるかもしれません。
― こうした実態を解決するのに、どのような対策を講じればよいと感じていますか?また、行政等にどうしたことを求めますか?
D先生:一般公務員にはない教職調整額を設定してくれたのはかの田中角栄です。彼は教師にとってはほんとうの理解者だし、教育の根幹、国家百年の大計がわかっている人だったと思います。なぜみんなが医者になりたがるか、それは、医者の資格があれば 就職に困ることなく、給与も良いからです。なぜ教師は倦厭されるかといったら、それはやっぱり仕事がきついだけで給与が良くないからです。
だから、 教育を良くしたかったら 先生の給与を医者並に今よりずっと上げるべきです。
そうすれば教育学部が人気になり、教員採用試験が難関になり、そんな難関を突破した教師を尊敬するようになるとおもいます。今の教育のやりにくさ、そこからくる業務の大変さは「(生徒が)先生を尊敬できない。」ということが一番だからです。
行政は教員の数を増やすことは考えていますが、その質をあげるのに「免許法」などという表面的な法律を作って、教師をしばっていますが、そんなのは、効果なしだと思います。
※「教職調整額」とは?
― 最後に、時間外勤務の業務内容に関して、やりがい、生きがいを感じているものはありますか?
D先生:教え子が卒業していく時、部活指導で涙を流して終了していくとき、何年かしてから連絡をくれたり、活躍して成長した姿を見たりするとき、そして生徒指導でたいへんだった生徒が「先生、ありがとう」と言ってくれるときなど、他の職業にはない充実感があると思います。もちろん金八先生のような あんなドラマチックなことはないですが。
― ありがとうございました!