1.どのようなニートを論点とするか
「ニート」の定義は
さまざまであるが、それが就業の問題として捉えられる際は、
「15〜34歳の非労働力(仕事をしていないし、また、失業者として求職活動をしていない)のうち、
主に進学でも、主に家事でもない者」(小杉,2005)
といった内容の定義がされる。
内閣府や厚生労働省の定義もそれぞれ若干の差異はあるものの(そしてその差異によって統計上の人数には差があるのだが)、「どのような状態の人をニートと呼ぶか」という意味では、いずれもこれと同じ考え方のものと言ってよい。
本ページでは、特にいわゆるコミュニケーションとの関連でニートについて考えるために、
既存のカテゴライズされたニートの分類で言うならば、
小杉による4つの分類、すなわち
@ヤンキー型(反社会的で享楽的。「今が楽しければいい」というタイプ)、
Aひきこもり型(社会との関係を築けず、こもってしまうタイプ)、
B立ちすくみ型(就職を前に考え込んでしまい、行き詰ってしまうタイプ)、
Cつまずき型(いったんは就職したものの早々に辞め、自信を喪失したタイプ)
のうち、Aひきこもり型を主に取り上げ、「社会的ひきこもり」との関連などについても考えてみたい。
ただ、コミュニケーションについて取り上げるという論点を、自分以外との関係を築こう・保とうとする際に何らかの葛藤を覚える、ということに見出すならば、B立ちすくみ型、Cつまずき型も、面接など就職活動において、会社に入ってからの就労中に、何らかの立ちすくみやつまずきがあって、ニートになったということであるから、問題のきっかけとなった場面を限定しただけで、問題の抱えるコミュニケーション関わるような内面としては、Aひきこもり型として集約できるかもしれない。「ひきこもり型」というネーミングは、いわゆるひきこもりや「社会的こきこもり」を想起させるため、それとはイメージの上で一線を画するために配慮したのかもしれない。
なお、本稿の冒頭で述べた当初の問題意識については、
フリー百科事典Wikipediaの「ニート」の項目が詳しく、よくまとまっている。
ここでも触れられているように、「ニート」の世間一般でのイメージは
「働かない若者」あるいは「ひきこもり」であることが多い。
ニートは、「大人たち」によって近年の若者バッシングの系譜で語られるとともに、
「若者」世代にとっても、インターネット上などで「おたく(オタク)」や「ねらー」と
高い親和性を持ったキーワードとして用いられている感もある。
本ページでは、「コミュニケーション」に着目することになったため、ある程度の割り切りをもって、
「社会的ひきこもり」に近いニート、小杉のいうひきこもり型のニートについて多く記述するが、
「ニートはひきこもりである」とか、「ニートはコミュニケーションがとれない」などと主張しているわけでは決してないことを強調しておきたい。
また、若者にとっての「ニート」のイメージ、あるいはインターネット社会における「ニート」言説を受けて、
想起するのは、韓国のひきこもり(「隠遁型ひとりぼっち」と表現される)の一部が、
「廃人」や「ケンチャニスト」などとも呼ばれるネット依存症とも言うべき状態にあって、
日本よりもインターネットとの関わりが深い、あるいは、インターネット上での人との関わりも持っていることである。
前提が長くなったが、
ニートの一部(主には「ひきこもり型」)のコミュニケーションについての言及と、
就学や就業といった分かりやすい形では社会にコミットしていないとされる人々が、
コミットしている世界のひとつとしてのインターネット社会の可能性にも触れたい。


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