近年のパソコン(以下、PC)の普及と情報教育の導入によって、PCを使った芸術教育が可能となった。
コンピューターグラフィック、アニメ−ション、映像編集、音楽作成といったPCを使った芸術(デジタルアート)が学校現場でどのように扱われているのか。
前項であげたように、総合的な学習において「情報教育」というテーマはしばしば扱われている。
PC芸術もその一環として扱われていることが多い。
PCを使った表現は独特のものであり、芸術教育の中で扱う意義はとても大きい。
PCを使った芸術教育を手がけられているある先生は以下のように述べられている。
「機械か手作りかの単純な二元論で認識されている、日本のコンピュータ美術は遅れていると感じています。アメリカのように、美術教育はヴィジュアルアートと認識すれば表現ツールとしての道は開けていくと思います。」
つまり、コンピューターを使った表現を、これまで慣れ親しんできた絵の具などの道具の代わりとして考えるのではなく、コンピュータならではの手法や表現の可能性に目を向けるべきだということだ。
コンピューターを用いることでできるようになった表現もたくさんある。(回転、収縮、コピー&ペースト、特殊効果など)
音声やアニメーション、動画といったデータとリンクできるのでマルチメディアな表現の可能性も秘めている。
活動の成果をネット上にUPすることやHPを作る授業も多く見られる。(例:THINKQUEST)
PCを使った芸術教育には特徴的な長所と短所がある。
具体的には以下のような点があげられる。
・ アニメや漫画もアートである。子ども達は高いモチベーションをもって取り組める。
・ 多くの試行錯誤が可能。間違ってもすぐに復元できる。
・ 道具が消耗しないので、絵の具のコストを心配するようなことはない。
・ 情報教育の側面もあるため、必然的に教科横断的な内容になっており、総合的な学習の時間に適した授業を行える。
・ 将来的な実益も大きい。デザイン事務所などではPCを使ったデザインが当たり前になっている。
・ 教員に相当な知識と技術が求められる。
・ ソフト面、ハード面ともに初期投資に費用がかかる。
・ 自宅にPCがあるかどうかで、授業への取り組みに差が出る。(デジタルディバイドの問題)
・ 著作権やネット倫理の問題(情報リテラシーの問題)
PC教育の短所は、学校現場でPC教育を扱う上で大きな支障になることも考えられる。特に自宅にPCがあるかどうかの問題は生徒間の格差を生み出す原因に十分なり得る。放課後に学校のPC室を自由に利用できる環境の整備、場合によっては担当教諭による補講なども求められると考えられる。
デジタルアート関連のワークショップは総合的な学習の大きな参考になる。
ワークショップは子ども達の創造性、自主性、独創性などを大事にする点で、総合的な学習と同じ性質を持っている。そのため、ワークショップにおける活動は、学校教育の参考になるものだと考える。
デジタルアートの多くが新しい表現を用いており、子ども達に新鮮な驚きを与えることができる。それはデジタルアートならではのことだ。そのようなデジタルアート作品ができるまでのプロセスを最初から最後まで体験できることは大きな意味を持つ。作品ができる課程を学ぶことで、アニメなどに対する見方も大きく変わってくる。
デジタルアートに必要な技術を簡単に学ぶことができる点も大きい。デジタルアートは、一見、作るのが難しそうだが、いざやってみれば意外と簡単にできるものである。デジタルアートに対する取っ付きにくさを解消することは、子ども達の可能性を大いに広げることになる。
以下、4組のアーティスト・団体によるワークショップを例示した。
一方で、ワークショップは学校の授業とは違い、そこまで厳しい評価を行っていない。ワークショップの手法を学校現場に取り入れる際には、遊びで終わってしまわないための工夫が必要である。
だだの体験で終わってしまわないように、教育的な狙いを常に持っていなければいけない。