<読み聞かせの推進力>
行政分野では,地方は比較的読み聞かせについて目を向けていて様々な取り組みを行っているようです。しかし,中央を見てみると文部科学省は読み聞かせの重要性は認識しているものの,幼稚園全体や家庭教育支援の一つとして位置づけているだけで特に読み聞かせに重点を置いた施策は行っていません。
読み聞かせの重要性が注目されている現在において民間での取り組みと一体になって支援していくことが望まれるのではないでしょうか。
<読み聞かせという場,時間,ふれあい自体の発達>
「読み聞かせ」という言葉からは,どうしても「大人が子どもへ読んで聞かせる」という一方向的なイメージを持ってしまいがちです。しかし実際には,読み聞かせという場と時間の中では,両者間で密接な相互作用が行われており,読み手である大人も子どもから多様な影響を受けています。読み聞かせは子どもの成長や発達に気づき,子どもと楽しくふれあいコミュニケーションできる絶好の機会と捉え直せれば,一日5分でも10分でも読み聞かせを続けることがかけがえのない時間の積み重ねとなり,子どもを育てる親として,大人としての成長にもつながるでしょう。
<多様なネットワークとの連携>
読み聞かせは,単に本を読む・聞くという時間が独立してあるわけではありません。場所も,家庭・学校・図書館など多様にありえます。こどもみらい館の取り組みにあるように,読み聞かせを,子育てネットワーク,図書館ネットワーク,ボランティア・ネットワークなど,地域におけるさまざまなネットワークの中で位置づけ,そこでどのような連携ができるかを考えていく必要があるでしょう。こうしてできあがった読書コミュニティのネットワークが,「教え/教えられる関係」、「学び/学ばれる関係」「支援し/支援される関係」によってさらに結びつき,他のさまざまなネットワークと相互にささえ合うなかで,豊かな地域ができあがっていくのではないでしょうか。
参考文献・サイト等
・秋田喜代美・庄司一幸編『本を通して世界と出会う 中高生からの読書コミュニティづくり』北大路書房,2005年
・秋田喜代美著『読書の発達心理学―子どもの発達と読書環境』国土社,1998年
・今井靖親・中村年江「絵本の読み聞かせに関する心理学的研究W」教育実践研究指導センター研究紀要,第2巻,67−75,1993年
・内田伸子『ことばと学び―響きあい,通い合う中で―』金子書房,1996年
・近藤文里・辻元千佳子「絵本の読み聞かせに関する基礎研究とADHD児教育への応用(1)―研究の展望と本研究の課題―」滋賀大学教育学部紀要 教育科学,No,56,
pp.65-77, 2006年
・立田慶裕編『生涯にわたる読書能力の形成に関する総合的研究』国立教育政策研究所生涯学習政策研究部,2007年
・トレリース.J著,亀井よし子訳『読み聞かせ:この素晴らしい世界』高文研,1987年
・ドロシー・バトラー著,百々佑利子訳『クシュラの奇跡 140冊の絵本との日々』のら社,1984年
・中村年江「絵本の読み聞かせに関する心理学的研究―絵本の読み聞かせに関する変数と望ましい読み聞かせ条件の検討―」読書科学,35,149-159,1991年
・松井直著『絵本のよろこび』NHK出版,2002年
・京都市子育て支援総合センター こどもみらい館HP
http://www.kodomomirai.or.jp/
・産経ニュース(2009年2月3日閲覧)
http://sankei.jp.msn.com/life/education/080506/edc0805060840001-n1.htm