5.昭和53年(1978年)改訂

@時代背景

 昭和40年代後半に高校進学率が90%を超え、高校教育の大衆化が叫ばれるようになってきました。しかし昭和45年の指導要領改訂が、内容の高度化を伴ったこともあり、「落ちこぼれ」「受験戦争」「紛争」などの問題が次々と表出してくるようになったのもこの時代です。

 そこで、文部省は「人間性豊かな児童生徒を育てる」ことを第一目標に、ゆとり教育を打ち出していくようになりました。教育内容は厳選され、小中高を通して授業時数は1割減、教育内容も理数教育を中心に、小中高あわせて3割近くの削減が行われました。

 後に「ゆとり教育」が問題化するその第一歩が、この昭和53年の学習指導要領と言えるのではないでしょうか?




A主な教育トピック

・業者テストの調査結果発表(昭和51年)
・大学入試センター発足(昭和52年)
・「教員の資質能力の向上について」答申(昭和53年)




B改訂の中身

数学T

(1) 数と式
 ア 数  (ア) 数と集合  (イ) 整数,有理数,実数
 イ 式  (ア) 整式  (イ) 有理式
(2) 方程式と不等式
 ア 方程式  (ア) 二次方程式  (イ) 簡単な高次方程式  (ウ) 連立方程式
 イ 二次不等当式
 ウ 式と証明
(3) 関数
 ア 二次関数
 イ 簡単な分数関数,無理関数
(4) 図形
 ア 三角比  (ア) 正弦,余弦及び正接  (イ) 正弦定理,余弦定理
 イ 平面図形と式  (ア) 点と座標  (イ) 直線の方程式  (ウ) 円の方程式


数学U

(1) 確率と統計  ア 順列・組合せ  イ 確率  ウ 統計
(2) べクトル  ア べクトルとその演算  イ ベクトルの応用
(3) 微分と積分  ア 微分係数の意味  イ 導関数とその応用  ウ 積分の意味
(4) 数列  ア 等差数列  イ 等比数列
(5) いろいろな関数  ア 指数関数  イ 対数関数  ウ 三角関数
(6) 電子計算機と流れ図  ア 電子計算機の機能  イ アルゴリズムと流れ図


代数・幾何

(1) 二次曲線  ア 放物線  イ だ円と双曲線
(2) 平面上のベクトル  ア ベクトルとその演算  イ べクトルの内積  ウ ベクトルの応用
   直線,円の方程式など
(3) 行列  ア 行列とその演算  イ 逆行列  ウ 一次変換と写像
(4) 空間図形  ア 空間における点・直線・平面  イ 空間座標  ウ 空間におけるべクトル
   直線,平面及び球の方程式を含む.


基礎解析

(1) 数列
 ア 簡単な数列    等差数列,等比数列など
 イ 数学的帰納法
(2) 関数
 ア 指数関数
 イ 対数関数
 ウ 三角関数  (ア) 一般角と弧度法  (イ) 三角関数とその周期性  (ウ) 三角関数の加法定理
(3) 関数値の変化
 ア 微分係数の意味
 イ 導関数とその応用  (ア) 関数の和・差,実数倍の導関数  (イ) 接線,関数値の増減,速度
 ウ 積分とその応用    不定積分,定積分,面積など


微分・積分

(1) 極限
 ア 数列の極限
 イ 関数値の極限
(2) 微分法とその応用
 ア 導関数  (ア) 関数の積・商の微分法  (イ) 合成関数・連関数の微分法  
          (ウ) 三角関数の導関数  (エ) 指数関数・対数関数の導関数
 イ 導関数の応用    接線,関数値の増減,速度,加速度など
(3) 積分法とその応用
 ア 積分法  (ア) 積分の意味  (イ) 簡単な置換積分法・部分積分法  
          (ウ) いろいろな関数の積分
 イ 積分の応用  (ア) 面積,体積,道のりなど  (イ) 微分方程式の意味  
            dy/dx=ky の程度の微分方程式を解くことを含む.


確率・統計

(1) 資料の整理  ア 変量の分布  イ 代表値と散布度
(2) 場合の数  ア 順列・組合せ  イ 二項定理
(3) 確率  ア 確率とその基本的な法則  イ 独立な試行と確率  ウ 条件つき確率
(4) 確率分布  ア 確率変数とその確率分布  イ 二項分布.正規分布
(5) 統計的な推測  ア 母集団と標本  イ 統計的な推測の考え




C気づいた特徴

・指導要領自体の記述量がかなり減った
・教師の自由度が増した
・職業教育の色合いがほとんどなくなった



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