解析U

T.確率を理解し用いること
1.順列や組合せ
 a.具体的な場面において,複雑な場合の数をどんな方針で分類し整理したら,数えやすくなるかを明らかにすること。
 b.複雑な場合の数の例として,順列や組合せの考えを見いだし,これについて上の方針で公式を導くこと。
 c.順列や組合せの考えを用いて,いろいろな具体的な問題を解決すること。およびこれらの考えが問題の解決を能率よくしていることを知ること。
 d.二項式の累乗の展開を計算すること。およびその係数の間の関係を見いだすこと。
 e.指数が整数の場合の二項定理を明らかにすること。およびこれをいろいろな計算に利用すること。
2.確率および期待値の意味
 a.死亡率とか男女の比とかいうような統計的な割合が,多数の対象について調べたときには,ほとんど一定とみられる事実を知ること。およびこの事実の将来の計画等に対する有用性を知ること。
 b.さいころやくじびき等の実例によって,数学的確率と,そのことを多数回試みたときの統計的割合とが,ほぼ等しいことを認めること。および,確率の概念を明らかにすること。
 c.起りうるあらゆる場合の数を数えて,確率を計算し,用いること。
 d.くじやその他の実例によって,数学的期待値の意味を明らかにすること。
 e.確率を用いるときの注意(確率が多数回くり返して起りうることにのみ適用されること)や,これが実際的な広い応用をもっていることを知ること。確率が0または1であることの数学的な場合および統計的な場合の意味を明らかにすること。
3.確率についての計算
 a.死亡率やさいころのような具体的な例によって,すでにわかっている確率をもとにして,より複雑な確率を計算によって求めること。
 b.排反事象や独立事象の概念の意味を明らかにすること。および,このような概念を用いることによって,確率の計算の見とおしがよくなるという利点を知ること。
 c.確率の乗法定理や加法定理を用いて,じょうずに確率を計算すること。
 d.具体的な場合について,一定の確率をもった事象を何回かくり返した場合の,その事象の現れる回数を計算し,これに基いて,二項分布の一般的な特徴をまとめること。
 e.上の例について,期待値を求めたり,期待値に近いをうる確率を計算したりして,大数法則の理解を深めること。および期待値や確率の概念を用いること。

U.資料を整理し,解釈すること
1.資料の表やグラフによる整理
 a.学校や近くの社会で調べた資料を,項目別や階級別に整理して,その度数を数えることによって,全体としての様子を明らかにすること。
 b.上の例について,度数分布表や度数分布グラフの使い方を理解する。
 c.階級の幅を変えて資料を整理すると,度数分布グラフがどのように変るかを実例について研究すること。
 d.具体的な資料について,いろいろな型の分布の実例を知ること。およびその分布の型が表わす意味を研究すること。
 e.体重と身長等の具体的な例について,二つの数量の間の関係を調べる方法として,相関表や相関グラフを用いること。
2.資料の特徴を表わす数値
 a.具体的な資料について,平均値やモード,中央値等の代表値を求めること。およびそのおのおのの長所を知ること。
 b.平均値の簡便な計算法をくふうして,具体的な場合にこの計算法を用いること。
 c.具体的な資料について,平均値に対する散布度を表わすものとしての標準偏差の意味を明らかにし,これを計算すること。具体的ないくつかの資料について,平均からの差が標準偏差の何倍かを越えない値の割合を実際に計算すること。および標準偏差と平均値との関係を理解すること。
 d.標準偏差の簡便な計算法をくふうして,具体的な場合に用いること。
 e.資料をグラフや表に表わすことと,平均値と標準偏差で表わすこととを比較して,そのおのおのの特徴を知ること。
3.資料を集めたり,引用したりするときの注意
 a.統計的な法則の意昧やこれに基いて個々の事象を判断するときに注意すべき事項を研究すること。
 b.統計資料がどんな性格をもてば信頼できるかを明らかにすること。
 c.一部調査による平均値の確からしさを,身近な実例を用いて研究すること。
 d.一部調査で全体を代表させるときの注意,および実際に用いられている一部調査の方法を知ること。

V.数列や級数を用いること
1.数列の規則
 a.日常生活その他の具体的な場面に現れてくる数列や,半具体的に数で与えられた数列について,相隣る二項の差や比によって,その一般的な法則を見いだすこと。
 b.具体的な,または半具体的な数列について,これを自然数列と対応させ,一般項の形を求めること。およびこれを用いて未知の項を計算すること。
 c.等差数列・等比数列の意味とその一般の形を明らかにすること。
2.数列の和
 a.具体的に数で与えられた等差数列について,その和を簡便に求める方法をくふうすること。
 b.等差数列の和の公式をつくり,これを用いていろいろな問題を解決すること。
 c.具体的に数で与えられた等比数列について,その和を簡便に求める方法をくふうすること。
 d.等比数列の和の公式をつくり,これを用いて金融その他に現われる具体的な問題を解決すること。
 e.その他の簡単な数列の和の公式をつくり,これを用いること。
 f.具体的な場合について,数学的帰納法を用いて証明を行うこと。
3.数列の極限
 a.具体的に数で与えられた等差数列や等比数列について,その項数がしだいに大きくなっていったときに,その値がどんなに変化していくかを研究すること。
 b.収斂・発散・振動の意味を理解すること。および等比数列が収斂するための条件を明らかにすること。
 c.年金その他の例によって,無限等比級数の意味を明らかにし,その極限の値を求めること。
 d.その他数列の極限とみられるいろいろな量を研究し,極限による考え方の有用なことを知ること。
 e.循環小数が有理数を表わすことを明らかにすること。

W.函数の概念を拡張し,完成すること
1.函数の概念
 a.日常生活の問題に関係して経験するいろいろな函数関係をグラフや式に表わして調べること。およびこれらの函数関係は,必ずしも単純な式で表わせるとは限らないことを認めること。
 b.函数の意味を明らかにすること。およびこれを統計的な研究によって得られる相関関係と比較すること。
2.解析Tで学習した初等的な函数の性質のまとめと発展
 a.一次函数は,単調に増大または減少すること。
 b.比例関係は,対数目盛を用いると,直線で表わされること。
 c.二次函数は,最大値または最小値を一つだけ持つこと。および独立変数が増加するときは,初め単調に増加し,次に単調に減少するか,あるいは,初め単調に減少し,次に単調に増加するかいずれかであること。
 d.三角函数は周期的変化をすること。
 e.指数函数もまた単調に変化する函数であり,複利の計算など,日常の場面によく現れるものであること。
 f.対数函数もまた単調に変化することを認めること。指数函数と逆の関係にあることを明らかにすること。
 g.3x+5y=5やx2+y2=8などのように,陰函数の形で表わされた函数関係を認めること。
3.函数の連続性
 a.不連続点をもつ函数のあることを知ること。およびその点での函数値と,その点の近くでの函数値の極限との関係を明らかにすること(たとえば,郵便料金のグラフのように,ある種のグラフは飛躍している点をもっていること,および函数の値の極限は,独立変数をどちらから近づけるかによって,違った値をとることがあること。)
 b.函数値が無限大になることの意味を明らかにすること。(たとえば,反比例のグラフのように,ある種のグラフでは,上方または下方に無限に伸びているところがあること。および独立変数がある有限な値に近づくときに,函数の値が,絶対値において無限に大きくなることがあること。)
 c.函数の連続性の意味を明らかにすること。(独立変数のどんな値に対しても,aやbに述べられたような場合が起らないこと。)
 d.不等式を満足する点の範囲を求めること,たとえば,y−3x−5=0や3x−2y−8=0などの一次函数のグラフの上側の点の座標は,それぞれ,y−3x−5>0や3x−2y−8<0なる不等式を満たし,下側の点の座標は,それぞれ,y−3x−5<0,3x−2y−8>0を満たすこと。および二次函数のグラフの上側,下側,あるいはx2+y2=r2のグラフの内側,外側などに対しても,同様な性質があることを認めること。
 e.連続な函数のグラフは,一般に平面を正の部分と負の部分とに分けること。およびそれをもとにして,不等式の解の存在する範囲を図示して,問題を解くこと。

X.変化率を用いること
1.変化率
 a.日常に用いられる平均変化率の意味を復習し,これによって,一次または二次の函数で表わされた数量関係を研究すること。
 b.具体的および半具体的な場合における函数の変化率を研究すること。(二次函数の場合には,平均変化率が一意に決まらないことを認め,速さやグラフの傾きなどの具体的な例をもとにして,平均変化率の極限としての変化率を理解すること。)
 c.いろいろな具体的および半具体的な整函数(二次式,三次式の程度)について,変化率を計算すること。また,これを用いて接線の方程式を求めること。
 d.接線の方向と,その接点の近くでの函数値の増加または減少の傾向との関係を明らかにすること。
2.導函数
 a.具体的および半具体的な函数について,変化率が独立変数の値によって変ることを明らかにすること。およびこのことから導函数の概念を導くこと。
 b.二次式,三次式などについて導函数を計算すること。および,その符号の変化によって,函数値の増加・減少の傾向を研究すること。
 c.極大・極小の概念やその最大・最小との違いを明らかにすること。および具体的および半具体的な函数(二次式,三次式,および分母が一次式程度の分数式)について,導函数を求め,これを利用して,極大・極小の問題を解決すること。および導函数がこの種の問題の解決に有用であることを明らかにすること。
3.函数の近似
 a.平方根表・対数表および三角函数表などについて,その一部を直線によって近似して,表の補間をすること。
 b.y=√xやy=1/xなどのx=1における接線によって,その近くの変化を近似できることを明らかにし,√1+x,1/1+xなどに対する近似式を求めること。
 c.具体的な問題に上の近似式を利用して,その関係を簡潔化すること。
 d.相対誤差の意味を明らかにすること(簡単な式について,その独立変数の相対誤差と従属変数の相対誤差との関係を,微小変化の考えによって明らかにし,用いること。)

Y.計量において極限を用いること
1.極限による量の大きさ
 a.長さ・面積・体積などの量の大きさが,単位の長さ・正方形・立方体などをもとにしてできていることを復習し,その場合に,いつも極限の考えによって,大きさが表わされていることを理解すること。
 b.円を正多角形で近似して,その周や面積の極限としての円周の公式や面積の公式を導くこと。
 c.一次式や二次式で表わされる具体的および半具体的な数量関係について,区分求積法によって面積を求めたり,速さから道程を求めたりすること。これによって,極限の考えが有用であることを明らかにすること。
2.積分の記号と演算
 a.上で求めた実例について,積分の記号を用いて,それらの量を求めた考え方とともに,その量の大きさを明確に表わすこと。
 b.y=x,y=x2などのグラフとx軸との間の面積を,xの函数として式に表わしてから微分してみると,もとの函数が得られることを知ること。
 c.上のことに基いて,微分と積分との関係を一般化すること。およびすでにわかっている定積分について,この関係を検証すること。
 d.上で求めた関係を用いて,いろいろな面積・体積,その他の実際問題を解決すること。
 e.具体的な函数のグラフや曲線について,これを適当に二次式で近似して積分し,シンプソンの法則をうること。およびシンプソンの法則を用いて,実際問題を解くこと。

Z.三角函数を用いること
1.三角函数の加法定理
 a.f(x)=x2,f(x)=x3,f(x)=√xなどの例について,一次の比例以外の函数では,一般に,函数が加法的〔f(x+y)=f(x)+f(y)〕ではないことを明らかにする。
 b.三角函数もまた加法的でないことを,いろいろな場合について確かめ,sin(α+β),cos(α+β),tan(α+β)と,α,βの正弦・余弦・正接との関係を,図によって求めること。
 c.加法定理の意味を明らかにし,これを用いていろいろな公式を導いたり,特殊な角の三角函数の値を正確に求めたりする。
2.三角形を解くこと。
 a.精密な測量の必要なわけや,中学校で学んだ三角函数による直角三角形の解法を復習すること。
 b.角の小さい単位としての分・秒を知ること。および三角函数表について,その小部分が一次式で近似できることを理解して,比例部分を用いること。
 c.一般の三角形について余弦法則を見いだし,これを実際的な問題に用いること。
 d.一般の三角形について正弦法則を見いだし,これを実際的な問題に用いること。
 e.一般の三角形について正接法則を見いだし,これを実際的な問題に用いること。
3.微小な角に対する三角函数
 a.角の単位としての弧度を知る。
 b.角の小さいところにおける正接・正弦の値を求めること。(その角を弧度で測った値にほぼ等しいことを認めること。)およびこれを用いて,天文等に出てくる微小な角を含む測量の問題を解決すること。


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