6.平成元年(1989年)改訂

@時代背景

 昭和から平成へと時代が変わり、社会全体を見渡せば、科学技術の発展、経済の進展、情報化などが特徴と言えるこの時期、教育界では反対に「いじめ」「不登校」「校内暴力」が深刻化し、文部省をはじめとした、さまざまな教育機関や教育関係者が、その対策に頭を悩ませるようになっていました。

 そんな中、学習面では個性重視、生涯学習体系への移行、そして情報化に対応した教育が目標に掲げられるようになり、学習指導要領の改訂が行われるに至りました。指導要領の中身としては、「新学力観」に基づいた、主体的学習、問題解決学習の重視へと内容がシフトしました。

 しかし数学教育に限って言えば、学習内容は少々増加したように思います。昭和53年の学習指導要領では削除された複素数平面の復活など、「ゆとり教育」とは逆行した流れが見受けられるように思います。




A主な教育トピック

・教員の初任者研修の制度化(昭和63年)
・教職教員免許法一部改正(取得単位数など)(昭和63年)
・国連総会「児童の権利条約」を全会一致で採択(平成元年)




B改訂の中身

数学T

(1) 二次関数
 ア ニ次関数とグラフ (ア) 関数とグラフ (イ) 二次関数とそのグラフ
 イ ニ次関数の値の変化 (ア) 二次関数の最大・最小 (イ) 二次方程式と二次不等式
(2) 図形と計量
 ア 三角比 (ア) 正弦,余弦,正接 (イ) 三角比の相互関係
 イ 三角比と図形 (ア) 正弦定理,余技定理 (イ) 図形の計量
(3) 個数の処理
 ア 数えあげの原則
 イ 自然数の列
 ウ 場合の数 (ア) 順列 (イ) 組合せ
(4) 確率
 ア 確率とその基本的な法則
 イ 独立な試行と確率
 ウ 期待値


数学U

(1) いろいろな関数
 ア 指数関数 (ア) 指数の拡張 (イ) 指数関数 (ウ) 対数関数
 イ 三角関数 (ア) 角の拡張 (イ) 三角関数とその基本的な性質 (ウ) 三角関数の加法定理
(2) 図形と方程式
 ア 点と直線 (ア) 点の座標 (イ) 直線の方程式
 イ 円 (ア) 円の方程式 (イ) 円と直線
(3) 関数の値の変化
 ア 微分係数と導関数
 イ 導関数の応用
 ウ 積分の考え


数学V

(1) 関数と極限
 ア 関数の概念 (ア) 分数関数,無理関数 (イ) 合成関数,逆関数
 イ 極限 (ア) 数列{rn}の極限 (イ) 無限等比級数の和 (ウ) 関数値の極限
(2) 微分法
 ア 導関数 (ア) 関数の和・差・積・商の導関数 (イ) 合成関数の導関数
         (ウ) 三角関数・指数関数・対数関数の導関数
 イ 導関数の応用   接線,関数値の増減,速度,加速度
(3) 積分法
 ア 不定積分と定積分 (ア) 積分の意味 (イ) 簡単な置換積分法・部分積分法
                (ウ) いろいろな関数の積分
 イ 積分の応用   面積,体積,道のり


数学A

(1) 数と式
 ア 数   整数,有理数,実数
 イ 式 (ア) 整式 (イ) 等式と不等式
(2) 平面幾何
 ア 平面図形の性質 (ア) 平面図形に関する基本的な定理 (イ) 条件によって定まる図形
 イ 平面上の変換 (ア) 合同変換 (イ) 相似変換
(3) 数列
 ア 数列とその和
 イ 漸化式と数学的帰納法
 ウ 二項定理
(4) 計算とコンピュータ
 ア コンピュータの操作
 イ 流れ図とプログラム
 ウ コンピュータによる計算


数学B

(1) ベクトル
 ア 平面上のベクトル (ア) ベクトルとその演算 (イ) ベクトルの内積
 イ 空間におけるベクトル (ア) 空間座標 (イ) 空間におけるベクトル
(2) 複素数と複素数平面
 ア 複素数と方程式の解 (ア) 複素数とその演算 (イ) 二次方程式の解
                  (ウ) 簡単な高次方程式
 イ 複素数平面 (ア) 複素数の図表示 (イ) ド・モアブルの定理
(3) 確率分布
 ア 確率の計算
 イ 確率分布 (ア) 確率変数と確率分布 (イ) 二項分布
(4) 算法とコンピュータ
 ア コンピュータの機能
 イ いろいろな算法のプログラム


数学C

(1) 行列と線形計算
 ア 行列 (ア) 行列とその演算 和,差,実数倍 (イ) 行列の積と逆行列
 イ 連立一次方程式 (ア) 行列による表現 (イ) 消去法による解法
(2) いろいろな曲線
 ア 式と図形 (ア) 方程式の表す曲線 (イ) 楕(だ)円と双曲線
 イ 媒介変数表示と極座標 (ア) 曲線の媒介変数表示 (イ) 極座標と極方程式
                   (ウ) いろいろな曲線
(3) 数値計算
 ア 方程式の近似解
 イ 数値積分法 (ア) 区分求積法 (イ) 面積の近似計算
(4)統計処理
 ア 統計資料の整理 (ア) 代表値と散布度 (イ) 相関
 イ 統計的な推測 (ア) 母集団と標本 (イ) 正規分布 (ウ) 統計的推測の考え




C気づいた特徴

・記述量はさらに少なくなった
・計算機からコンピュータへと記述が変更
・枠組みがガチっとした印象



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