7.平成11年(1999年)改訂

 @時代背景

 平成8年の第15期中央教育審議会における「ゆとり」と「生きる力」への提言を基本として、完全学校週5日制を見据えた学習指導要領の改訂が行われました。豊かな人間性と自ら学び考える力の育成をキーワードに、「総合的な学習の時間」などが導入され、それに伴い学習内容の削減が大規模に行われました。

 学習内容が削減されたかわりに基礎基本を確実に身に付けさせる指導の重視がうたわれましたが、「学力低下論争」に代表される世論の様々な声によって、平成15年に内容の一部改正が行われるに至りました。

 数学に限ってみても、内容の削減は顕著で、平成元年の指導要領で復活した複素数平面は、またもや削除となりました。




A主な教育トピック

・不登校の児童生徒数が9万4千人で過去最高を記録(平成9年)
・国旗及び国家に関する法律成立(平成11年)




B改訂の中身

数学基礎

(1) 数学と人間の活動
 数量や図形についての概念等が人間の活動にかかわって発展してきたことを理解し,数学に対する興味・関心を高める。
 ア 数と人間  イ 図形と人間
(2) 社会生活における数理的な考察
 社会生活において数学が活用されている場面や身近な事象を数理的に考察することを通して,数学の有用性などを知り,数学的な見方や考え方を豊かにする。
 ア 社会生活と数学  イ 身近な事象の数理的な考察
(3) 身近な統計
 目的に応じて資料を収集し,それを表やグラフなどを用いて整理するとともに,資料の傾向を代表値を用いてとらえるなど,統計の考えを理解し,それを活用できるようにする。
 ア 資料の整理  イ 資料の傾向の把握


数学T

(1) 方程式と不等式
 数を実数まで拡張することの意義を理解し,式の見方を豊かにするとともに,一次不等式及び二次方程式についての理解を深め,それらを活用できるようにする。
 ア 数と式  (ア) 実数  (イ) 式の展開と因数分解
 イ 一次不等式
 ウ 二次方程式
(2) 二次関数
  二次関数について理解し,関数を用いて数量の変化を表現することの有用性を認識するとともに,それを具体的な事象の考察や二次不等式を解くことなどに活用できるようにする。
 ア 二次関数とそのグラフ
 イ 二次関数の値の変化  (ア) 二次関数の最大・最小  (イ) 二次不等式
(3) 図形と計量
 直角三角形における三角比の意味,それを鈍角まで拡張する意義及び図形の計量の基本的な性質について理解し,角の大きさなどを用いた計量の考えの有用性を認識するとともに,それらを具体的な事象の考察に活用できるようにする。
 ア 三角比  (ア) 正弦,余弦,正接  (イ) 三角比の相互関係
 イ 三角比と図形  (ア) 正弦定理,余弦定理  (イ) 図形の計量


数学U

(1) 式と証明・高次方程式
 式と証明についての理解を深め,方程式の解を発展的にとらえ,数の範囲を複素数まで拡張して二次方程式を解くことや因数分解を利用して高次方程式を解くことができるようにする。
 ア 式と証明  (ア) 整式の除法,分数式  (イ) 等式と不等式の証明
 イ 高次方程式  (ア) 複素数と二次方程式  (イ) 高次方程式
(2) 図形と方程式
 座標や式を用いて直線や円などの基本的な平面図形の性質や関係を数学的に考察し処理するとともに,その有用性を認識し,いろいろな図形の考察に活用できるようにする。
 ア 点と直線  (ア) 点の座標  (イ) 直線の方程式
 イ 円  (ア) 円の方程式  (イ) 円と直線
(3) いろいろな関数
 三角関数,指数関数及び対数関数について理解し,関数についての理解を深め,それらを具体的な事象の考察に活用できるようにする。
 ア 三角関数  (ア) 角の拡張  (イ) 三角関数とその基本的な性質  (ウ) 三角関数の加法定理
 イ 指数関数と対数関数  (ア) 指数の拡張  (イ) 指数関数  (ウ) 対数関数
(4) 微分・積分の考え
 具体的な事象の考察を通して微分・積分の考えを理解し,それを用いて関数の値の変化を調べることや面積を求めることができるようにする。
 ア 微分の考え  (ア) 微分係数と導関数  (イ) 導関数の応用  接線,関数値の増減
 イ 積分の考え  (ア) 不定積分と定積分  (イ) 面積


数学V

(1) 極限
 微分法,積分法の基礎として極限の概念を理解し,それを数列や関数値の極限の考察に活用できるようにする。
 ア 数列{rn}の極限  (ア) 数列の極限  (イ) 無限等比級数の和
 イ 関数とその極限  (ア) 合成関数と逆関数  (イ) 関数値の極限
(2) 微分法
 いろいろな関数についての微分法を理解し,それを用いて関数値の増減やグラフの凹凸などを考察し,微分法の有用性を認識するとともに,具体的な事象の考察に活用できるようにする。
 ア 導関数  (ア) 関数の和・差・積・商の導関数  (イ) 合成関数の導関数
          (ウ) 三角関数・指数関数・対数関数の導関数
 イ 導関数の応用  接線,関数値の増減,速度,加速度
(3) 積分法
 いろいろな関数についての積分法を理解し,その有用性を認識するとともに,図形の求積などに活用できるようにする。
 ア 不定積分と定積分  (ア) 積分とその基本的な性質  (イ) 簡単な置換積分法・部分積分法
                 (ウ) いろいろな関数の積分
 イ 積分の応用  面積,体積


数学A

(1) 平面図形
 三角形や円などの基本的な図形の性質についての理解を深め,図形の見方を豊かにするとともに,図形の性質を論理的に考察し処理できるようにする。
 ア 三角形の性質  イ 円の性質
(2) 集合と論理
 図表示などを用いて集合についての基本的な事項を理解し,統合的に見ることの有用性を認識し,論理的な思考力を伸ばすとともに,それらを命題などの考察に生かすことができるようにする。
 ア 集合と要素の個数  イ 命題と証明
(3) 場合の数と確率
 具体的な事象の考察などを通して,順列・組合せや確率について理解し,不確定な事象を数量的にとらえることの有用性を認識するとともに,事象を数学的に考察し処理できるようにする。
 ア 順列・組合せ  イ 確率とその基本的な法則  ウ 独立な試行と確率


数学B

(1) 数列
 簡単な数列とその和及び漸化式と数学的帰納法について理解し,それらを用いて事象を数学的に考察し処理できるようにする。
 ア 数列とその和  (ア) 等差数列と等比数列  (イ) いろいろな数列
 イ 漸化式と数学的帰納法  (ア) 漸化式と数列  (イ) 数学的帰納法
(2) ベクトル
 ベクトルについての基本的な概念を理解し,基本的な図形の性質や関係をベクトルを用いて表現し,いろいろな事象の考察に活用できるようにする。
 ア 平面上のベクトル  (ア) ベクトルとその演算  (イ) ベクトルの内積
 イ 空間座標とベクトル  空間座標,空間におけるベクトル
(3) 統計とコンピュータ
 統計についての基本的な概念を理解し,身近な資料を表計算用のソフトウェアなどを利用して整理・分析し,資料の傾向を的確にとらえることができるようにする。
 ア 資料の整理  度数分布表,相関図
 イ 資料の分析  代表値,分散,標準偏差,相関係数
(4) 数値計算とコンピュータ
 簡単な数値計算のアルゴリズムを理解し,それを科学技術計算用のプログラミング言語などを利用して表現し,具体的な事象の考察に活用できるようにする。
 ア 簡単なプログラム
 イ いろいろなアルゴリズム  (ア) 整数の計算  (イ) 近似値の計算


数学C

(1) 行列とその応用
 行列の概念とその基本的な性質について理解し,数学的に考察し処理する能力を伸ばすとともに,連立一次方程式を解くことや点の移動の考察などに活用できるようにする。
 ア 行列  (ア) 行列とその演算  和,差,実数倍  (イ) 行列の積と逆行列
 イ 行列の応用  (ア) 連立一次方程式  (イ) 点の移動
(2) 式と曲線
 二次曲線の基本的な性質及び曲線がいろいろな式で表現できることを理解し,具体的な事象の考察に活用できるようにする。
 ア 二次曲線  (ア) 放物線  (イ) 楕(だ)円と双曲線
 イ 媒介変数表示と極座標  (ア) 曲線の媒介変数表示  (イ) 極座標と極方程式
(3) 確率分布
 確率の計算及び確率変数とその分布についての理解を深め,不確定な事象を数学的に考察する能力を伸ばすとともに,それらを活用できるようにする。
 ア 確率の計算
 イ 確率分布  (ア) 確率変数と確率分布  (イ) 二項分布
(4) 統計処理
 連続的な確率分布や統計的な推測について理解し,統計的な見方や考え方を豊かにするとともに,それらを統計的な推測に活用できるようにする。
 ア 正規分布  (ア) 連続型確率変数  (イ) 正規分布
 イ 統計的な推測  (ア) 母集団と標本  (イ) 統計的な推測の考え




C気づいた特徴

・情報通信ネットワークの活用に言及
・「〜の程度とする」「深入りしない」という条件付けが多くなった



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