オープンスペースの実践が注目されるようになっておよそ30年経過し、近年では、オープンスペースで学んだ児童の追跡調査を含め、様々な調査研究と評価が行われています。その中のいくつかを紹介します。
生徒による評価の調査では、オープン化が約7割程度進行していた中学校でアンケート調査を行っている。約7割のオープン化ということで、この中学校の生徒たちはオープンプランとそうでない学校施設の両方を経験しており、両方の環境を比較することができました。（生徒による教科教室制、オープンスペースの利用と評価 教科教室型中学校校舎の利用状況と評価に関する研究 その１ 渋谷篤 山口勝巳 屋敷和佳 小原正明 谷口汎邦 日本建築学会大会学術講演梗概集）
風通しがよく涼しい・移動に便利・他クラスの生徒との交流がしやすい・開放的 憩いの場となる
隣の教室や廊下がうるさくて学習のじゃまになる
また、この調査ではより長い期間古い校舎で過ごしてきた3年生が、1・2年生に比べてオープン化に関して否定的であることがわかっています。
学校のオープン化に対する教師の評価への調査（三春町の学校建築計画の評価に関する調査報告その２ オープンスペース導入に対する教員の評価 川村泰弘 長澤悟 片山泰絵 鏑木剛 佐伯和彦 高橋徹 日本建築学会大会学術講演梗概集）からは、以下のような意見が上げられました。
どのクラスの子とも話しをするチャンスがある
活動の幅が広がる
教師間の関係で学年を担当すると意高まった
学年観の話し合いや連絡が密になる
学級王国にならず色々な面でオープンになっている
カーペット床に児童が寝転んだり、OSの家具等も使って学習するなど、活動の場が自由に選択でき、伸び伸びとした雰囲気で学校生活を送っている
教室に間仕切りがないことで視線が気になる 掲示面が少なくなってしまう
オープンスクール卒業生の追跡（オープンスクール卒業生の追跡調査（２）面接調査における学習環境に関する語りの分析 佐野亮子 上智大学教育学論集p.28）では、オープンプランスクールを卒業しおよそ20年たった卒業生への質問紙調査と面接調査を行い、そこから以下のような3つの結論が導き出されています。
オープンプランスクールの建設には、行政関係者、建設関係者、学校関係者という３つの機関の立場の人々が関係しています。学校建築をめぐる近年の動向についての研究（佐野亮子「学校建築をめぐる近年の動向と諸問題」）からは、その３者におけるそれぞれの問題点が指摘されています。
東京大学教育学部の佐藤学先生も「もっと教育学や教育現場，先生との共同が必要であること，教育空間としての場を作り上げる仕組みが教師側に無いこと。これらが，環境，空間としての評価軸を無視してきた」という指摘をしています。（吉村彰「学校建築の計画案に見る計画研究と建築作品の評価」建築計画ニュース038）
