認知カウンセリング
理論から実践へ
多重に支えられた動機が学習意欲を上げ、さらに、継続するためにはよいということを理論編で述べました。二要因モデルで動機づけ理論を考えるとするならば、いろいろな志向の考え方を取り入れて実践にいかそうという話です。
理論編では学習意欲を上げる方法について理論的にアプローチしてきましたが、ではそれは理論だけの机上の空論ではないのでしょうか。このHPの「はじめに」でも述べたように、自ら積極的に学ぼうとしたり、努力したり、問題解決などに正面から取り組むことにを目的として学問的なアプローチをしている例の一つが、「認知カウンセリング」です。
認知カウンセリングの背景
教育心理学や認知心理学では、学校教育をはじめ、日常場面での学習素材を研究対象として積極的に取り上げる傾向が近年著しくなっています。とはいえ、特に我が国においては、研究者が直接教育実践に携わりながら研究していく体制は決して十分ではありません。認知カウンセリングはこうした中で1985年頃市川氏らが始めた実践研究活動です。
通常のカウンセリングでは、パーソナリティや人間関係などの生活上の怠惰面に関する相談が行われるのに対して、認知カウンセリングでは、学習や理解などの認知的な問題に関して、認知カウンセラーが個別に相談に乗り指導や援助を行うことになります。
認知カウンセリングの目的
学習者の自立
“Be strategic to teach yourself!” 自己教育力,自己学習力
学習者は自分を教える教師であり、そのためには、自分をよくはあくし、策を練らなければいけないという考え方です。
カウンセラーの個別指導の力量向上
基礎研究の発展
認知カウンセリングの学習観
どのような学習館を持つかは、もちろん最終的には学習者の自由ですが、「勉強がわからない、できない」といってくる児童・生徒の学習観は、心理学的観点からも、教育的観点からも問題を感じることが多いものです。
認知カウンセラー自身の考え方や他の考え方を述べたりすることをきっかけとして、学習者が自分の学習観を相対化して捉え、より広い選択肢の中から自分の学習観を選ぶことができればいいという立場を取っています。
認知カウンセリングでの手法
認知カウンセリングは次の4つの側面から学習者のつまずきの原因を探り,学習者の自立を図ることを目指すものです。
動機づけ 学習意欲は高いか,どのような種類の動機が強いか(具体例)
メタ認知 自分の理解状況の把握は十分か(具体例)
知識構造 既有知識がきちんと整理されているか,誤解はないか(具体例)
必要知識 問題を解いたり,新しいことを学ぶの必要な知識は欠けていないか
これらの側面からカウンセラーが学習者と向き合ったあと,学習者に対して認知的な学習スキルの改善を目指した方法として教訓帰納がある。
カウンセラーが注意すべき点
いくら説明してもわかってくれないとき
カウンセラー自身に原因を帰属させる。わからないときは、学習者のほうが自分よりつらいはず、わからない責任の半分以上は教え方にある、これこそカウンセラーに与えられた試練であり、これを乗り越えてこそ、自分の技量の向上がある、判りやすく説明できないことは、自分が十分わかっていないからではないか、わかりそうでわからない問題がでてきてこそ研究テーマになる、などと考えてみる。
教えたことをすぐ忘れてしまうとき
能力ではなく努力に原因を帰属させる。再帰属訓練の方法。
× 「この前教えたばかりでしょ!」
他者から自分の考え方を批判されたとき
いろいろな考え方、教育観を知っていることはプラスであると考えて、批判は素直に聞くが、素直に受け入れる必要もない。他人の価値観を認めたうえで議論する。
× 聞く耳を持たずに反駁する。