人間がそんなに本来、怠け者だというならば、いっそのこと、気持ちのいいベッドの上にごろんと寝かせて外からはできるだけ刺激を与えないようにする。目には覆いをして、手にはカバーをしますが、生理的な欲求はいつでも求めに応じて満たしてやる。おなかがすいたといえば食べ物はあげる。喉が乾いたといえば飲み物はあげる。睡眠や排泄も自由にできます。こういう状態にしたらどうなるだろうかという実験です。

 これはアメリカやカナダで1950年頃に行われ、被験者の大学生にはかなりの高額のアルバイト料を払ってこれに参加してもらったといいます。最初のうちは、これはいいアルバイトだということで、喜んでごろごろとしている。ところが、2日くらいたつと、もう退屈で耐えられなくなってきます。それでも何とかがんばる被験者もいます。自分で自分に刺激を与えようとして歌を歌ってみたり、独り言を言ってみたりして耐えようとする。もう刺激がほしくてたまらなくなるわけです。それでもがんばっていると、そのうち頭が正常に働かなくなってくる。たとえば簡単な計算ができなくなったり、幽霊の話などを全部鵜呑みにして信じたりとか、一種の洗脳されたような状態になってしまう。一週間くらいがんばる被験者も中にはいたそうですが、後遺症も残るということが言われて、その後こういう実験は危険なのでやってはいけないと禁止になりました。