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博物館の課題



これまで見てきたような、博物館の概略や歴史、現状を踏まえて、これから博物館はどのようなことをやっていけばいいでしょうか?

ここでは、いくつかの分野に分けて論じてみたいと思います。


(1)サービス
まず、開館時間についての指摘がありました。これについては、上野にある国立博物館では、特別展があるときは金曜日は8時まで開館していたり、多くの特別展が長期間開館しているなど、できるだけ長く開館しようと努力していますが、利用者が特に多い土曜日、日曜日でさえ、5時閉館が多い、という問題があります。これは、従業員の労働時間とも関係があるため、なかなか改善は難しいのかもしれないのですが、利用者としての立場では、もっと長く開館している、利用しやすい博物館になってもらいたいという願いがあります。

また、建物の広さについても指摘がありました。既存の建物については、面積を小さくすることはなかなか難しいでしょうが、例えばメリハリをつけた展示(照明による効果や、配置など)にしてみたり、途中に休憩できるスペースを置いたりすることで、少しは改善できると考えられます。例えば、ブリヂストン美術館では、一つ一つの展示スペースが細かく分かれていて、見学しやすい配置になっています。

→→→ブリヂストン美術館HPへリンク


(2)子ども
小・中学校での社会科見学で無理矢理つれてこられた、と感じた人も少なからずいたようですが、これは、もともと博物館に興味がなかったと考えるよりも、せっかく普段生活している学校を離れて、博物館にやってきたのに、楽しいと思える展示が無かったという意味ではないでしょうか。たしかに、多くの博物館の展示は、大人を対象にしたものが多く、また、静かに見て回ることがマナーとされるため、子どもにとっては窮屈に感じられたのではないでしょうか。

これについては、いろいろな博物館で子ども向けの展示が取り組まれ始めています。例えば、子ども用のワークシートやパンフレットを配布したり、実際に動かしてどのようなメカニズムになっているのか、遊びながら確かめることができる展示物がつくられるようになってきています。

夏休みや冬休みといった長期休暇には、特にこの種の展示が増えると思います。

→→→『遊べる博物館』参照

(3)連携
@人的提携
博物館の専門職として、学芸員があります。しかし、ほとんどの場合は博物館にある文化物の保存や展示に奔走しているため、なかなか利用者との交流がないのが現状です。しかし、利用者としては、ただ物を見るだけではなく、もっと直接に説明をしてほしいと思っています。その穴を埋める対策として、ボランティアをおく博物館が増えてきています。展示室に何人かのボランティアがいてくれて、よく分からない点や疑問に思った点を解決してくれます。また、博物館ツアーを開いている場合もあります。

→→→『参加できる博物館』参照

A地域との連携
博物館は、多くは公的な施設で、つくってしまって終わり、という場合が多くありました。しかし、最近は、地域博物館という概念が徐々に広がってきており、地域の自然や景観の保全や、地域史の解明や地域文化の向上を目的としたり、市民の生涯学習ができるようになってきています(柘植、2004)。
また一方、この地域全体との連携という考え方には、せっかく税金で博物館を建設しても、なかなか市民が利用してくれない、という博物館自体の赤字経営という現状も関係しています。最近は、エコミュージアムという考え方も普及してきており、この状況を打開してくれるかもしれません。エコミュージアムは、地域の生活そのものを博物館として見せていこう、という活動です。コウノトリの飛来地として有名な兵庫県豊岡市や、茨城県の西部にある、ミュージアムパーク茨城県自然博物館などが挙げられます。

→→→兵庫県豊岡市HPへリンク
ミュージアムパーク茨城県自然博物館HPへリンク

B他の博物館との連携
博物館は他の博物館とのつながりがなかったのですが、最近は、ひとつの博物館を行って終わり、となってしまわないように、利用者にたくさんの博物館に行ってもらえるように、いろいろな工夫をしています。

→→→『つながる博物館』参照

C学社連携(学校と連携)
普通は、「学社連携」という言葉は、学校と社会との連携を指しますが、博物館の考えを含む社会教育の領域については、学校教育と社会教育との連携を意味しています。
“(2)子ども”とも関係するのですが、学校とつながることで、子どもにも楽しい博物館になることで、これまで博物館というと堅苦しいイメージがつよかった大人も、少しイメージが変わって、もっとたくさんの人が利用したくなるのではないでしょうか。

→→→『学校教育との連携』で詳しく説明しています。

 

《参考文献》
鈴木眞理編集 2004 博物館学シリーズ1『改訂博物館概論』 樹村房
柘植信行 2004 第6章 地域施設としての博物館 鈴木眞理編 博物館学シリーズ1『改訂博物館概論』 樹村房