心いき東大プロジェクトとは
About the project“心の問題” の背景には、人々の “生きる力” を醸成し、問題に適切に対処する “タフな心” を育むことができない日本社会の価値体系の限界があると考えます。そこで、価値をテーマとする文系学問と情報通信技術をテーマとする理系学問が共同し、“生きる力” を育む新たな価値創造と、“心の問題” 解決を支援する社会サービスを開発、実装し、新たなサービス産業を創出するために心いき東大プロジェクトを立ち上げました。
“心の問題” 解決の手段として「認知行動療法 CBT: Cognitive Behavior Therapy」が有効であることは、多くのエビデンスにより具体的に示されています。心いき東大プロジェクトは、CBT と、進化した情報通信技術との融合により、“心の問題” 解決にイノベーションをもたらすことを目指します。

メンタルヘルスの不調に伴う社会のさまざまな問題を解決するため、スマートフォンなどの情報機器、クラウド等の先端 ICT 技術・サービスを利用し、CBT に情報通信技術を取り入れた CCBT Computer-based CBT、さらに我が国のゲーム産業が誇る最新のゲーミフィケーションの方法を取り入れた GCBT Gamification CBT の仕組みを創造し、社会での実装を進めます。
また、単に心の問題解決のための「生きる力の回復」だけではなく、「生きる力の育成」や「生きる力の持続」も幅広くテーマとしました。それによって、心の健康の支援サービスを新たな ICT 関連産業として創出し、メンタルヘルスシステムのイノベーションをもたらすことを可能とします。
プロジェクト導入の効果
心の問題解決に有効な CBT は、自らの心の状態、睡眠や発汗等心の問題のサインとなる生理状態を的確に把握し、否定的な考えを現実的な考え方に修正し、不適切な行動を適応的行動に改善する方法です。この CBT は、これまでメンタルヘルス専門職が主導し、ユーザーの活動を管理して行うシステムとなっていました。それに対して本プロジェクトが提案する活動では、ソーシャル ICT を活用することによって、ユーザーが自発的に CBT による問題解決の取組みに参加し、しかも低コストで活用することを可能となります。
また、多くの日本人は、メンタルヘルスの専門家を尋ねることに引け目を感じ、それが心理的バリアになって治療を回避し、結果的に問題が重症化することも起きていました。この点についても、ICT を活用することで、いつでも、どこからでも解決やサポートにつながることが可能になり、問題の解決へのバリアフリーな社会を作るとともに、全体のメンタルヘルスリテラシーの推進をもたらします。
さらに、このようなユーザーへの効果は言うに及ばず、ICT を用いることによって日々の情報蓄積からメンタルヘルスに関する貴重な直接的データを大量に得ることができます。このような情報をビッグデータとして解析することも可能となります。もちろんメンタルヘルスに関する社会的な分析を深めていく際には、データの適正な取り扱い、利用に関して倫理的な側面、情報セキュリティ等を考慮し、社会的ルールの研究や合意形成を積み重ねていく必要があります。