――まとめ――

 

■いじめをなくすための「日本のピア・サポート・プログラム」
 いじめは現在,はじめに示したようにとても複雑化しています。
 それは,世間一般からすれば,コミュニケーションツールが多様化し,大人の目に見えなくなり始めたからだといわれています。滝先生によれば「社会性の欠如」によってもたらされるものでした。
 そうした複雑化したいじめひとつひとつに教師が対応していくのでは,対症療法にはなっても問題をを根本的に解決できるとは限りません。
 心理教育は,コミュニケーションのとり方を教えるという点では有効な面もあるでしょう。しかし,発達途上にある子どもたちの心身の発達に応じて,子どもたち自身が人として必要なものを身につけるよう援助するという,「教育」の中に,いじめの予防につながるものを入れていくという考えが,結果的には効果的なのではないでしょうか。そう考えると,日本のピア・サポート・プログラムは一つの期待される取り組みといえると私たちは思います。。
 問題もあります。インタビューの中でもあったとおり,生徒数の多い学校では特に時間割の調整や先生同士の話し合いの時間が取りにくく,それによってプログラムの実施が敬遠されることも少なくないということです。また,このプラグラムには即時的な効果は期待できません。さらに,長期的な視点が必要とはいっても,問題の顕在化した,現にいじめいじめられた子どもたちには何らかの対処が必要なことも否めないように思います。
 
 今回の調査から,いじめをなくす取り組みには,教師間の連携協力,安易な方法に飛びつくのではなく,長期的な視点で子どもを育てていくという姿勢の重要性を感じることができました。いじめにあってしまった子ども,いじめをしてしまった子どもに真剣に対応しつつも,問題の顕在化していない子どもたちへの教育をほどこすこと。現在確立されているようないじめに対処する方法に加えて,これらの活動を行っていくことで,いじめ自体を減らし,起こってしまってもすぐ食い止める,というような方向にいじめ対策が向かえばよいのではないかと思います。


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