社会学的に見た学習意欲の動向
学習意欲を測る指標
子どもの学習意欲を知るための指標は「学校外でどれくらい勉強しているか」,「授業に真面目に取り組んでいるかどうか」,「勉強が好きかどうか」,「勉強をもっとしたいと思うかどうか」などが考えられるが,ここでは子どもの学習時間に着目する。
データにはBenesse教育開発センターが刊行している『第4回学習基本調査報告書・国内調査・小学生版』,同中学生版,高校生版を用いる。※学校基本調査の詳細はこちら
小学生の学習時間
図2-1-5を見ると小学生の学習時間は,平均すると81.5分となっている。「ほとんどしない」と「およそ30分」を合計した比率は第1回(90年)28.5%→第2回(96年)32.3%→第3回(01年)40.3%だが,第4回(06年)は33.1%と減少しており,小学生が学習に回帰している様子がみられる。 ※図は報告書・小学生版32項より抜粋 |
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平日の平均学習時間を地域別に見てみると,大都市部で増加が著しい(図2-1-7)。表2-1-6も 同時に考慮すると,小学生の学習時間の増加の主な要因は,大都市の中学受験予定者の増加,中学受験予定者がさらに勉強に向ったことであると考えられる ※図は報告書・小学生版34項より抜粋 |
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中学生の学習時間
「2時間以上」勉強する中学生の比率は,第1回(90年)44.3%→第2回(96年)38.6%→第3回(01年)32.7%→第4回(06年)37.7%と推移している。平均学習時間は,第1回96.9分→第2回90.0分→第3回80.3分→第4回87.0分と,今回の調査では前回より約7分増加している。 ※図は報告書・中学生版43項より抜粋 |
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高校生の学習時間
小中学生の学習時間が回復している一方で,高校生の学習時間は回復していない。図2-1-9を見ると,「ほとんどしない」と「およそ30分」を合わせると39.5%となり,およそ4割が多くても30分くらいしか勉強していないことがわかる。結果的に,小学生の平日の学習時間が81.5分,中学生が87.0分,高校生が70.5分と,高校生が最も学習時間の短い生徒集団となっている。
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学習時間の回復に階層差
以上より,総じて子どもの学習時間は回復傾向にあることが分かった。しかし,ここで明らかになるのは競争するものとしないものの分化という問題である。図1-3を見てみよう。 ☆ 小・中学生 図1-3の小中学生のデータを参照すると,全ての小中学生に等しく学習習慣が戻ってきたわけではないこtが分かる。小中学生の中で学習時間の増加が著しいのは成績の自己評価が最も高い層の子どもたちである。 ☆ 高校生 図1-3では偏差値帯別に平均家庭学習時間の変化が示されている。第4回調査において学習時間の増加が見られないのは,偏差値50以上55未満の層だけである。この層は第1回調査時には偏差値55以上の層と比肩する学習時間であったにも関わらず,第4回では60.3分にまで落ち込んだ。このことによって「家庭学習の習慣を保持する高校生はいっそう『薄く』なった。学習習慣は,高校階層構造の頂点ンい位置する一握りのエリート高校生に局所的に存在しているにすぎない」(高校生版17項)。 ※図は報告書・高校生版18項より抜粋 |
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