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博物館の概要


1、博物館とは何か



博物館とはなんでしょうか?博物館について調べているいくつかの調査の結果を見てみましょう。

(株)丹青研究所調べ 平成7年 5808館
文部科学省社会教育調査 平成8年 3502館
(財)日本博物館協会 平成9年 3449館

丹青研究所調べによれば、博物館の数は年々増加しています。(平成7年5808→平成14年7855)ならばこの3つの調査の結果も年々増加傾向にあるはずです。しかしこのデータの結果とは異なる傾向です。ではなぜこのような結果が生まれるのでしょうか?

ひとつには、それぞれの調査が異なる博物館の定義を行っていることが考えられます。

博物館というとどのようなものを思い浮かべるでしょうか?
上野の森にある博物館、街にある市町村立の博物館、誰か有名人物にちなんだ資料を集めたものや、観光地の遺跡などに隣接した博物館などがあります。
ラーメンや餃子の博物館などもありますが、多くの人にとって博物館というものは、古いものが並べてあって、たまに学校の社会見学等で訪れる、というイメージが大きいのではないでしょうか?

それでは、上記の3つの調査はどのようなものを基準にしているのでしょうか?どの調査も「博物館法」という法律をひとつの基準としているのはほぼ間違いないと考えられます。この法律が日本の博物館の基準を定めているからです。

博物館法では、第2条で「『博物館』とは、歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収集し、保管(育成を含む)し、展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクレーション等に資するために必要な事業を行い、あわせてこれらの資料に関する調査研究することを目的とする機関」であると定義しています。
ここでいう博物館とは、
・歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を扱っている。
・それらの資料を収集し、保管(育成)し、教育的配慮の下に展示し、その調査研究を行う。
期間だということになります。

多くの方の考える古いものが展示されている施設というものもこの定義の中に納まっているといえますが、注意すべき点がいくつかあります。

@芸術に関する資料
→この定義では美術館も博物館のひとつとして定義されているということです。博物館と美術館では違うと考える人もいると思いますが、この定義では、扱う資料が違うということなのです。

A「育成」
ここで育成というのは、実は動物や植物などの生物のことです。つまり資料として動物や植物を収集し、育成しているという点で、動物園や水族館、植物園もこの定義の中に含まれるということです。

B教育的配慮の下で展示
博物館は珍しいものを展示してある施設だと考えられることが多いと考えられます。たしかに珍しい資料(恐竜の化石であったり、有名な画家の絵)が来日すると多くの人が博物館や美術館を訪れますから、多くの人はその珍しいものを見たいと思って博物館を訪れるのですが、その展示は博物館で働く職員(後で詳述)によってその博物館の教育目的に沿って展示されているのです。つまり博物館は教育施設といえます。

今まで見てきたとおり、博物館とは一見異なる多くの施設を含む概念であり、そのためにはじめの調査結果のようなばらつきが生まれるものと考えられます。

ところで、日本には博物館の登録制度が存在しています。博物館の設置に基準を設け、その質の維持・向上につとめてきたということです。しかし、この登録制度には問題が多く現在改正作業が進められています。

2、博物館の職員について


日本の博物館には大きくわけて2分野の職員がいます。ひとつは博物館を経営面で支える事務系の職員、そしてもうひとつが学芸員です。

学芸員はその博物館が扱う資料についての専門性と同時に教育施設としての博物館を運営していく上での教育に関する専門性が必要とされるといわれています。
資料についての専門性は、その資料の収集・保存に関する知識、その資料の研究に関する知識が含まれます。また、教育に関する専門性については近年言われていることで、見学する中で来館者の学習を促すような展示作りや、展示に関するワークショップ、小中学校などへの貸出資料キットの製作など、近年その動向が注目されています。

3、博物館の推移


このグラフでは、上の調査とは博物館として指定しているものが違うため数字に開きが見られます。
しかし、このグラフから博物館設置数の推移と急激な伸びについてみることができるでしょう。



出典:鈴木眞理編集『改訂 博物館概論』



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