目次
「海外のユニークな教育について調べよう」と思い調査した。問題意識としては、これからの日本の教育のあり方を考える上で、世界中の国々が行っている教育法の中で日本が参考にできるものがあるのではないか、ということだ。調べているうちに、「フィンランド・メソッド」というものに出会った。それはフィンランドで実際に行われている教育法を紹介しているのだが、ただの紹介ではない。フィンランドは下記にあるように、OECDの調査で3科目全てにおいて極めて優秀な成績を収めている。特に読解(国語力)については2000年の調査に続いて1位を獲得している。日本はといえば、2回の調査で8位→14位と6位もランクダウンしてしまっている。これからの国語教育を考える上で、フィンランドに学ぶところは極めて大きいと感じ、調べることにした。
読 解 |
科 学 |
数 学 |
フィンランド(1) |
フィンランド(1) |
香 港 |
韓 国 |
日本(2) |
フィンランド(2) |
カ ナ ダ |
香 港 |
韓 国 |
オーストラリア |
韓 国 |
オ ラ ン ダ |
リヒテンシュタイン |
リヒテンシュタイン |
リヒテンシュタイン |
ニュージーランド |
オーストラリア |
日本(6) |
アイルランド |
マ カ オ |
カ ナ ダ |
スウェーデン |
オ ラ ン ダ |
ベ ル ギ ー |
オ ラ ン ダ |
チ ェ コ |
マ カ オ |
香 港 |
ニュージーランド |
ス イ ス |
ベ ル ギ ー |
カ ナ ダ |
オーストラリア |
ノ ル ウェ ー |
ス イ ス |
ニュージーランド |
ス イ ス |
フ ラ ン ス |
チ ェ コ |
日本(14) |
ベ ル ギ ー |
アイスランド |
マ カ オ |
スウェーデン |
デ ン マ ー ク |
参考(2000年)
日本・・・読解(8位)・科学(2位)・数学(1位)
フィンランド・・・読解(1位)・科学(3位)・数学(4位)
読解(国語力)の低下!!
フィンランドが1位なのはなぜ??→「よく練習したから」
・日本人に欠けている能力⇒「グローバル・コミュニケーション力」
日本人は、日本人同士ならコミュニケーション力はある。ただそれは日本特有のもので、世界には様々な人がいて、意思疎通が容易ではない場面がでてくる。そこではグローバルコミュニケーション力が必要なのだ。
→「グローバル・コミュニケーション力」を体系的に習得していかなければならない
(←日本にはそのようなメソッドがない)
@.発想力の養成
「言いたいこと」を思いつかなければ,コミュニケーションは始まらない。まずは発想力を身につける
カルタを使って表現の枝を伸ばす!
・例 どこで? どうやって?
↑ ↑
いつ?←『桃太郎が鬼退治をした』→誰と?
A.論理力の養成
言っていることに筋が通っていなければ,どこの誰にも通じない。話の筋を通すために必要なのが論理力である
「ミクシ?(どうして?)」と問いかける→客観的論理力の育成
・例
○良い例 ×悪い例
A「りんごはおいしいです」 A「りんごはおいしいです」
B「ミクシ?」 B「ミクシ?」
A「甘いからです」 A「おいしいからです」
・さらに段階が進むと・・・物語を読む!
ここでは先生は「ミクシ?」と問いかけると同時に、「これからどうなると思う?」とも問うのだ。こうして物語の続きを予想させる。なぜこのようなことをさせるのか?それは、物語の続きを予想するには必ず理由(原因)が必要だからだ。つまり、「原因―結果」というカテゴリーを習得させることにより、論理力を養成するのである。
B.表現力の養成
言い方が悪ければ,「言いたいこと」も伝わらない。表現力を磨いて,相手に伝わる言葉を身につける
フォーマットにそった文章の練習法で「言いたいこと」を伝える力がつく
・例 作文を書く時。
第一段落にはあなたの名前と生年月日と家族構成を書きなさい。
第二段落にはあなたの好きなことを書きなさい。
第三段落にはその理由を書きなさい。
第四段落にはそれにまつわるエピソードを書きなさい。
・・・というようにある程度決められた形で表現することを身に付ける。
・さらに段階が進むと・・・簡単な物語を創作する!
これまでの3つの力(発想力・論理力・表現力)を活用して簡単な物語をつくらせる。実際に物語を作っていく中でこれまで学んできたことを確認する。
C.批判的思考力の養成
相手の言い分にも一理ある。自分の言い分にも問題がある。それを認めるところからコミュニケーションは始まる
改善と見直しの訓練法から,優れた発想と正しい論理が生まれる
・例「本当にそうかな?」という発想を身につける
⇒改善と見直し
D.コミュニケーション力の養成
発想力・論理力・表現力・批判的思考力――――全てを駆使して,グローバル・コミュニケーションを目指す
仕上げのメソッド。議論のルールと相手のことを考えた言動を身につける
班で議論をする⇒ルールを身につける,コミュニケーションの実践
・例
班で議論をする
⇒ルールを身につける,コミュニケーションの実践
フィンランド・メソッドは、5つの段階を経てグローバル・コミュニケーション力の養成を目指すものである。現在の日本に求められるのは、このような体系化された教育システムとそれを実践する環境(学校、教師)ではないか。どのような能力を、どのような目的を持って、どのような教育法で、どのように伸ばしていくのか。それを現場が共有しないでいては、学力低下は避けられない。
ただし、先生の中にも導入に積極的な人達もいる一方、国文学者の先生で反対する人達もいるようだ。文部科学省のホームページにある中央教育審議会初等教育分科会国語専門部会(第8回)の議事録に書いてあるこれまでの主な発言集の中で、PISAに関わる発言を見つけたので引用したい。
『 PISAで求められている読解力は、いわゆる我が国で言われてきた狭い意味での読解力ではなく、論証力、論述力が求められていることを明確にする必要がある。』
『PISAの問題は重要であるが、それ以外の国語の学力として日本人としてどういうことを身につけるべきかという視点も大切である。』
このような議論がなされている。
前者の意見はPISAの誤解を解き、後者の意見は数字化されたPISAでは表れない日本人としての学力の重要性を説いているのだろう。
いずれにしても、良い成績をとって悪いことなどないのだ。特に「優秀」とされてきた日本人にとっては、このまま堕落していって良いわけがない。
フィンランド・メソッドに日本が学ぶところは、極めて大きいのではないだろうか。