その他の問題
コミュニケーション不足が引き起こす問題点として,その他のものを挙げる。
1,国語力の低下
あるアンケート調査では,20〜50代の男女100人の回答を求めたところ,数人を除いてほとんど全員が子ども国語力低下を感じていた。
国語力の低下を感じるのは,子供が単語のみで会話を成立させようとしたり,ら抜き言葉を使ったり,敬語の不適切な使い方をしたり,当て字や流行言葉でやり取りをしたりと,日常生活で語彙不足が感じられる場面に多いようである。
原因として,親世代が正しくなくなってきていること,活字離れが進んでいること,テレビやビデオ,ゲームに時間を割いていること,といったことが多く挙げられていたが,一番多かった回答は会話量の減少であった。
・核家族化が進み,お年寄りと会話することが減った。
・少子化により,兄弟での会話がない。兄弟げんかをする機会がないのが原因なのではないか?
・人間関係が希薄になってきているのが原因だ。
・メールやインターネットなど間接的な会話が多い
・近所づきあいがなくなった
・友達同士が公園で遊ばなくなった
これらは,全て実際の回答である。実際にコミュニケーションをとる時間が少なくなってきたり,周りの人間の言葉遣いが正しくなかったりして,子どもが国語力を低下させているという認識が一般的な様である。
2,障害の発生
次に,コミュニケーション能力の未熟により,ADHD(注意欠陥/他動性障害)やLD(学習障害)に似た状態があらわれるかもしれないというものだ。
例えば,テレビやビデオをずいぶんみているけれど,言葉遅れの様子もなく、表情も普通で、特に問題はなく育っているようにみえていても,実際はコミュニケーション能力の未熟未発達が進んでいる可能性がある。その結果,上に挙げた種々の障害にみまわれることもあるようだ。
また,障害にならなくても,思春期頃になって,不登校・引きこもり・神経症・非行などのかたちで問題化するかもしれず,もっと年齢がいってからでは,社会的不適応として問題化するかもしれない。
親子間のコミュニケーションが不足がちな中で育つ子ども、またはゆがんだコミュニケーションの中で育つ子どもは、言葉や表情が乏しくなり,いずれどこかで不登校・引きこもり・神経症・非行などのかたちで“発達障害”を表面化させる。これもきわめて当然の成り行きだそうだ。
そのため,アメリカ小児科学会は「2歳までの子どもにテレビをみせてはならない」と警告を発したが,これはテレビが赤ちゃんの日常から「人間的で濃密なコミュニケーション体験」を奪ってしまうことを理由にしている。