1980年代からの校内暴力・不登校・いじめ・少年非行・学級崩壊・学力低下などの学校が抱える様々な問題を解決する一つの手段として、「学びの共同体」という取り組みが佐伯胖, 佐藤学, 藤田英典を中心に進められてきた。これは@授業の改革、A同僚性の構築、B保護者の学習参加、の3本柱から成っている。第一の柱は具体的には、「活動的で協同的で表現的な学び」を実現することであり、そのために授業に小グループでの協同的な活動を取り入れる事を薦めている。

 ここで取り上げるメリットは、この「学びの共同体」を実践している富士市立岳陽中学の校長:佐藤雅彰の著書「公立中学校の挑戦」より抜粋したものである。これは、協同学習を取り入れる事によって生徒がどのように変化したかが、具体的に分かりやすく書かれていたためである。著者自身が授業を行ったわけではないため、ここでは彼を「研究者」として扱った。

(1)社会面でのメリット
・他者を知り、互いに支え合うかかわりを作る事ができる。
・仲間意識が高まる。
・多様な価値観や感じ方に触れることによって自己認識が豊かになる。

(2)学習面でのメリット
・小グループ活動であるため、(自信がない場合も)気軽に自分の意見が言え、学びに参加できる。
・多様な考え方をすり合わせたり、新しい考えを共同で考え出す事ができ、学びに広がりができる。
・分かるまで仲間に聞くことができる。
・教師は援助の必要な子どもに必要な援助ができる。(個別指導ができる。)
・できる子どもが低学力層の子どもたちをケアし、集団の学力アップにつなげられる。
=高学力層の子どもにとっては自分の知識を、より確かにすることとなり、低学力層の子どもにとっては学ぶ事をあきらめなくなるといった相乗効果が期待できる。
・全体の学力が上がるため、さらに発展的な問題にも挑戦でき、学びの質を高める事ができる。発想力や想像力が向上する。

参考文献
佐藤雅彰,佐藤学【編著】:「公立中学校の挑戦 授業を変える学校が変わる 富士市立岳陽中学校の実践」,2003,ぎょうせい