(1)はじめに
1983年に任天堂からファミリー・コンピューターが発売になりました。 ちょうどその頃、私たちも生まれました。それからファミコン(ファミリー・コンピューターの通称)は どんどん発達していき、ゲームボーイ・スーパーファミコン・PlayStationなどの機種も生まれてきました。 つまり、ちょっと大袈裟かもしれませんが私たちはTVゲームと一緒に成長してきたのです。 実際に、私たちが子どもだったときの友達との遊びは、TVゲームと外遊びが半々くらいでした。 会話の話題がほとんどゲームの話しがほとんどになった時もありました。

しかし往々にして、大人たちからTVゲーム=悪とされがちです。それは、たとえば TVゲームをすると「頭が悪くなる」「犯罪にはしりやすい」などです。

しかし実感からして、こういった意見はTVゲームを実際にはやったことのない評論家から なされることが多いように感じています。そこで今回、「こどもにとってTVゲーム」は本当に悪影響なもの かどうか調べようと思いました。

(2)現状分析
左図は1兆円産業であるおもちゃ産業におけるTVゲーム市場を示したグラフです。 おもちゃ産業の約68%はTVゲームが占めておりこのことから、いかにTVゲームが こどものおもちゃとして需要・供給があるか、が分かると思います。
右図は、子ども達が「休日に何をしているか」をグラフにしたものです。 これをみると中学生・小学校高学年ともにTVを見て過ごす子が多いというのが分かります。 注目して頂きたいのは、「TVゲームをして過ごす」という子どもが、「スポーツをして過ごす」という子どもより 多いということです。このことから、現代の子どもの遊びの中心はスポーツよりTVゲームである、と言えると思います。

以上2つのグラフから現状として、TVゲームは子ども達の遊びにすっかり浸透している、ということが分かりました。

(3)影響(悪影響論と有用性)
現状としてTVゲームは子ども達の遊び・生活に浸透していることが分かったのですが、 そうなると少なからず影響はででくるわけで、評論家達からは様々な意見がでできています。


まず、悪影響論ですが、悪影響論が出てきた背景には1988年の「ドラクエ事件」があると言われています。 「ドラクエ事件」とは、大人気ソフト・ドラゴンクエストVを買うために生徒が学校をさぼって徹夜で店の前に 並んだり、買えなかった子どもが買えた子に対して暴力をふるった、などの事件のことで、当時マスコミに取り上げられ TVゲームに注目が集まりました。
悪影響論として、@暴力性の増加 A学力低下 B視力低下 C体力低下 などがあげられます。
例えばゲームの中には、ゾンビを銃で撃ちまくる「バイオハザード」の様なかなり暴力的表現を含むものもあり、 そういったゲームをすると@暴力性が増加すると言われます。またTVゲームを長時間することにより、 相対的に勉強時間が短くなりA学力低下、ずっとTV画面を見続けることによってB視力が低下すると言われます。 またTVゲームは基本的に動く必要が無いのでC体力が低下すると言われています。しかしこのどれもが、はっきりとした因果関係を 示すデータや根拠がだされていないというのが現状です。

逆に有用性としては、@娯楽提供 A教育的目的 Bカウンセリング C問題解決能力 などがあります。
TVゲームは一つのエンターテインメントとして成り立っているという点で@娯楽提供。また楽しんで覚えられるという点でA教育的目的。 Bのカウンセリングですが、精神科医の香山リカさんはTVゲームを自閉症の子どものカウンセリングに用いています。 著書の中で、精神的に逃げ場の無くなった子どもにとって、TVゲームの世界が一時的に避難できる場所となる話や、 自閉症の子どもがTVゲームを一つのコミュニケーションツールとして周りの子どもたちと話すようになった話などが取り上げられています。 ゲームのほとんどは何かをクリアしていくものであり、バーチャルではありますがC問題解決能力が養われるということが言われています。

(4)これからの課題
今まで見てきたように、TVゲームには良い面も悪い面もあります。理想像としては、悪影響を排除し有用性を残す、 ということになると思うのですが、そうするために私たちはこれからどうしていくべきなのでしょうか。

<教育者>子ども達に両方の側面を説明していくことが求められると思います。
つまり、悪影響論のみを教えるのでなく、良い面も教えるべきだと思います。 また同時に、保護者は自分の子どもが、どんなゲームをしているのか・どれくらいゲームをしているのか、ということを ちゃんと把握する努力をすべきだと思います。

<ゲーム業界>自主規制するような組織を作ることが求められていると思います。
ゲームソフトはどんどん多様化していて、中にはグロテスクなもの・性的表現を含むものあります。 そういったものを感受性豊かな子どもが誤って手に取らないようにするには、作る側・ゲーム業界が自主規制を すべきだと思います。実際に2002年から、非営利活動法人・コンピューターエンターテインメントレーティング機構が 年齢別レーティング制度を設けています。これは、ソフトのパッケージに対象年齢や種類が分かるシールを貼るもので、 これにより購入者は、買う前にどういった種類のゲームか、対象年齢を知ることができるのです。

(5)おわりに
TVゲーム産業はこれからも成長していくと思います。確かにTVゲームには子どもに良くない影響を与える部分は あるかも知れません。しかしだからといって良い影響を無視するのは賢明ではないと思います。 教育者・ゲーム業界が努力していくことによって悪影響を排除し有用性を残していけたらと思います。

参考文献 香山リカ 「テレビゲームと癒し」 岩波書店