緒川小学校での実践例


ここでは、少々古い事例ですが、愛知県の緒川小学校で行われた実践例について述べてみたいと思います。
T6つの様態 〜緒川小学校独特のプログラム
U緒川小学校での自己評価〜目標としての自己評価




T6つの様態
学習指導要領によれば、学習領域は教科・道徳・特別活動の3領域となっています。しかし、緒川小学校のプログラムは「学習の態様」という視点から、6つの態様に整理されています。

@「はげみ学習」
A「集団学習」
B「週間プログラム」による学習
C「総合的学習」
D「オープン・タイム」の学習
E「集団活動」

以下、それぞれ簡単に説明すると、
@「はげみ学習」
これは、計算、文字、読書、マット、鉄棒、水泳、リコーダーといった、基礎的で技術的な内容を学習します。計算について例を挙げてみると、「数と計算」の領域を全学年通じて83段階のステップに分け、金曜日の2限に全学年全クラス一斉に行います。個人個人それぞれが自分の進度で自分のステップの問題の書いてある問題用紙を取り、解いてゆきます。解き終わったら答えあわせをし、間違った問題があった場合は、そのステップ担当の教師(例えばA先生はステップ40〜45、などといったように割り振られている)のところへ行き、マンツーマンで指導を受けたり、または自習(○年○組の教室は小数の教室、などと決まっており、そこには学習材が用意されている)したりします。

A「集団学習」
これはまず学年一斉授業で指導したあと、理解状況において4つのグループにわけ、それぞれのグループに教師がつき、繰り返し指導したり個別指導を行ったりします。理解の十分なグループには教科書の練習問題などの教材をあらかじめ用意しておいて、自習形式をとらせるなど、上のはげみ学習ほどではないにせよ、個人間のレベル差を考慮しているものと言えます。

B「週間プログラム」による学習
これは「一定の制御形態のもとに自学を進める複数教科同時進行の単元内自由進度による」ものとしていて、あらかじめ用意された「学習の手引き(目標や標準的な学習の流れが記載)」を参考に、自分で計画をたて、週または月単位で学びます。かなり自由な形式の学びではあるものの、大まかな方向性は決められているのが特徴です(例えば、5月は戦国大名の争いについて考える、等)。

C「総合的学習」
学年で大きなテーマが決められており、Bとは違い、教科学習の色は薄いのが特徴です(例えば、5年生のテーマは「いのち」6年生のテーマは「いきる」)。

D「オープン・タイム」の学習
CDはいずれも広く用いられている総合学習に含まれるものですが、Cとの違いは、それぞれの児童がテーマを自由に決められる点にあります。より個人の自由が利く学習といえるでしょう。

E「集団活動」
これは生活の中から学習を積み上げていくもので、特別活動の色が強いものです。

かなり乱暴にまとめてみましたが、@ABは教科学習、CDEは総合学習であり、また教科学習の色が強い@やAには「指導の個別化」、C以降の総合学習には「学習の個性化」に重点を置いていることがうかがえます。これらを通じて、「自力で課題解決ができる力をもった子ども、真に生きぬく力を持った子ども」を育てようという試みなのです。


U緒川小学校での自己評価
この緒川小学校が、自己評価をどのようにとらえていたかについて述べていきます。

まず、生徒が「自分が学習力をコントロールしている主体である」と認識することが重要であるとしています。これは主体的な学習へと自己を高めていくことが目標であるからです。そして、特徴的なところは、緒川小学校は、自己評価を教育活動の目標としてとらえている、としています。かなり積極的に自己評価の意義を認め、実践しているといえます。

具体的には、上記TのDオープンタイムにおける自己評価では、テーマの選び方や計画通りに実行できたかなど、複数の項目のうちあてはまるものに○をつけさせます。そしてレポートを作成し、それを子どもたちによって相互評価させる、といった手法がとられています。またB週間プログラムにおいては、「新しく知ったこと」や「問題点」などを記録させ、そのうえで次はどういう学習に取り組むか、などを毎回の学習毎に記入させる、といった形をとっています。

決して自己評価をやりっぱなしにするのではなく、以降の学習にフィードバックされるような工夫がほどこされているのは注目すべき点です。また、緒川小学校は教師がその自己評価を吟味することも重要であると強調しています。


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