教育研究創発機構
機構概要
教育研究創発機構・初代機構長 苅谷剛彦 あいさつ

 ますます複雑化し、多様化する「教育の問題」を解明するためには、既存の学問分野にとらわれない教育研究が必要となる。このような時代の要請に応えるために、2004年の4月、東京大学大学院教育学研究科に「教育研究創発機構」が誕生した。「機構」は、従来の教育研究の枠組みにこだわることなく、新たな教育研究を誘発し創造することをめざした新しいタイプの組織である。
 機構は、従来から教育学研究科内にあった、「学校臨床総合教育研究センター」、「COE基礎学力研究開発センター」に加え、同じく今年4月に発足した「先端発達研究センター」の3センターを中心に、さまざまな分野の研究をつなぎ、さらなる発展を促すためのインキュベーションないしネットワーク構築のための機関である。とくに大学院生をはじめ、若手研究者に、「コースの壁」「既存の領域の壁」を越えた研究交流の場を提供したいと願っている。次世代が担っていく新たな視点からの教育研究を創発することも、機構の役目と考えるからである。その具体的な方法として、機構主催公開研究会を企画・開催することにした。公開研究会の場が、新たな研究の芽を育む苗床となれば幸いである。 (苅谷 剛彦  初代教育研究創発機構長)




      
学校臨床総合教育研究センター(2006年3月31日まで)


 「実践的」「総合的」「連携性」などの原則に基づく教育学の新しい研究教育体制作りの一環として1997年に設立された。
「いじめ」「不登校」「教師のリカレント教育」「多文化教育」「情報教育」「教師ストレス」等、現在の学校教育がかかえる様々な問題と課題に関する実践的・学際的な研究を行い、それを通して、教育に関する研究の実践化と総合化、実践的・総合的な指向を有する研究者の養成、学校現場の問題や課題の解決への支援を行うことを目的としている。多様な分野の研究者や学校現場の教師とともに、「特定の教育問題の根本的解明と、それに基づく実践的な問題解決プログラムの提起」を行う。
 一つのテーマに関する2〜3年間のプロジェクト研究を中心に運営され、現在は「学習環境改善のための学校支援システムの比較調査および開発研究」(責任者 秋田喜代美・恒吉僚子)が2003年度から3年間の予定で実施されている。これは初等中等教育における学習環境及び学校支援システムの国内・国際比較調査および開発研究を国内外で行い、学習環境支援システムのモデル化をめざすプロジェクトである。 国内研究では、第1に現状分析として初年度に関東・関西の2都市において小学校5年生と中学校2年生および各々の保護者と各調査協力校教員への学習環境質問紙調査を実施している。第2の柱、学校支援システムへのアクションリサーチ研究として校内研究の事例検討会を実施し、小中学校、教育センターの研修事例の相互検討やスーパーバイズシステムの構想、今後の校内研修における課題等の検討を引き続き行っている。そして第3に国際比較研究として授業ビデオを刺激とする、日中米シンガポール間での共同研究により教員や保護者、生徒の授業に埋め込まれた信念の検討が現在進行中である。 (センター長 市川 伸一)

COE基礎学力研究開発センター


 グローバル化・知識社会化の中で、個人の知識や能力は、その人自身のみならず社会の発展に影響を与える要因として重要度を増しつつある。しかし他方で、学習する側の意欲は衰退し、さらに社会や経済の変化の中で学校教育も機能が低下しつつある。そのため、従来の学力水準の維持さえも困難となっているのが現状である。しかも、新しく必要とされる「学力」の内容について社会的コンセンサスが得られているわけではないことが、問題をより深刻にしている。
 以上のことは、日本だけではなく、OECD諸国に共通の問題となっている。社会全体が、新しい学力に一定のイメージをもち、その学力を育成するためのシステムを構築する、そうしたことが喫緊の課題となっている。そして、そのための問題点の整理と基礎的な調査分析が、大学、そして研究者に求められている。
 こうした背景のなか、本センターは、「基礎学力育成システムの再構築」を課題に、文部科学省「21世紀COEプログラム」の一つとして設置された。学力調査を通じて現代の子どもの基礎学力の実態を解明するとともに、アクション・リサーチ、国際比較調査等を実施し、基礎的、理論的な検討を行っている。(センター長 金子 元久)


ホームページ
 http://www.p.u-tokyo.ac.jp/coe/

先端発達研究センター


 外的・内的環境への適応として、例えば教育内容・遺伝性により、知性・感性・身体性の発達・獲得が達成される様相については、これまでも個別領域では膨大な知見の蓄積がなされてきた。一方で、これらの知見をつなぐ営みは未だ十分とはいえない。しかしながら近年、認知の身体性や環境依存性、発達の自発性・自律性と環境との相互作用、学習・記憶・制御などの脳機能の複雑適応系モデル、身体性と生命倫理・発達臨床など、学問領域を横断しかつ総合する研究活動を通じて、個々のシステムのみからでは得られない新たな人間発達の一面が見えてきた。
 本年4月に開設された本センターでは、このような知性・感性・身体性の創発的ダイナミクスの諸様相を記述・解析することにより、発達、すなわち人間の可塑性の本質への接近を目指す。知性の創造・発達、環境と遺伝の相互作用、教育の医学的・生理学的・心理学的基盤、複雑適応系の理論、等を専門とする研究者を中心に(本)プログラムを運営し、領域総合型の人間科学を推進する。(センター長 佐々木正人)

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