過去にいただいたご質問に答える形で、研究の目的や方法をご説明いたします。
目的:研究室全体として目指していること
「得られた結果はどういうことに役立つの?」
私たちは生後一年未満の赤ちゃんの発達のすじ道を明らかにすることを目的として、さまざまな研究を行っています。
研究のひとつの分け方として、基礎研究と応用研究という考え方があります。基礎研究は理論を構築することや、人類が共有すべき科学的な知識が深まることを目的としています。応用研究は具体的な問題の解決を目指すことが出発点で、得られた結果を使って、例えば薬や治療法、おもちゃ、教材などの開発が行われます。
私たちの研究は基礎研究ですので、「どういうことに役立つの?」というご質問に対しては、「ヒトの発達初期におけるすじ道に関する知識を深めることに役立ちます」という答えになります。
方法
私たちは、さまざまな刺激に対する赤ちゃんの脳の活動の変化を調べる研究を複数行っています。
「どうやって赤ちゃんの脳の活動を調べるの?」
光トポグラフィと呼ばれる装置を使って調べます。この装置から出る赤い色の光(近赤外光)を頭皮の外側から照らすことによって、脳の表面を走る血液中の、酸素化・脱酸素化ヘモグロビンの相対的な変化量を調べることができます。酸素化・脱酸素化ヘモグロビンの変化量から、大脳皮質にある神経細胞が活発に活動しているかどうかを推定することができるのです。
「危ないんじゃない?」
いいえ、安全です。光トポグラフィで用いている光は、太陽光線にも含まれる波長のものです。光の強さは非常に弱く、直射日光を浴びたときの数%の影響しかないと考えられます。熱いとか痛いといった不快感はありません。研究を始めます前に、保護者様に光トポグラフィ装置や、プローブと呼ばれる実際に頭皮に当てる部分を見たり、触ったりしていただきながら、安全性について詳しくご説明いたします。プローブは頭を一周するハチマキのような形をしています。
その他
「どんなことをするの?」
研究は、赤ちゃんが眠っているときにお願いするものと起きているときにお願いするものとの2種類ございます。別ページでご紹介する研究すべてをお願いするわけではなく、赤ちゃんの様子を拝見しながら、いくつかの研究を実施する予定です。
「研究中はどんな様子?」
スタッフが赤ちゃんをお預かりし、モニタの前の椅子に座ります。そして、赤ちゃんの頭に光トポグラフィのプローブをつけさせていただきます。
研究実施中、保護者様は赤ちゃんと一緒の部屋にいらしていただくことができます。
部屋はじゅうたん敷きになっており、衛生管理上の理由から靴をお脱ぎいただいております。
「赤ちゃんが泣いたときは?」
すぐに中止いたします。
「どのくらいの時間がかかるの?」
研究そのものは複数お願いした場合でも40分程度でおしまいになりますが、途中、赤ちゃんの様子を拝見しながら気分転換の休憩を取ったり、授乳やおむつの交換をお願いしたりすることがございますので、90分程度の時間をお心積もりいただければと思います。
「過去に何人くらいの赤ちゃんが参加しているの?」
本郷キャンパスでは光トポグラフィ装置を使った研究を2001年3月から開始し、2000人以上の赤ちゃんにご協力いただいております。さらに、ご協力いただいている病院で、保護者様のご同意を得た上で、新生児の計測も行っております。